日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

このミステリーがすごい!2026年版のランキングを予想する!

毎年恒例のミステリーランキングといえば、「このミステリーがすごい!」だろう。

 

ランキングの発表は12月なのだが、この記事では「このミステリーがすごい!2026年版国内ベスト10」に入りそうな作品を予想したい。

 

どのくらい当たるのか年末に答え合わせをしよう。この記事は随時更新予定だ。

 

 

「このミステリーがすごい!」とは?

このミステリーがすごい!」は、宝島社が毎年発行しているミステリー小説のランキング本だ。ミステリーファンにはお馴染みのランキングだろう。国内・海外のミステリー作品を対象に、識者や書店員などの投票によってランキングが決定される。
単なるランキング本ではなく、著者へのインタビューやミステリーに関する特集記事なども充実しており、毎年ミステリーファン必携の一冊となっている。
「このミステリーがすごい!」のランキングは一年間のミステリを振り返る上で非常に参考になる。ランキング上位の作品はどれも魅力的なミステリ小説ばかりだ。

ちなみに2025年の「このミステリーがすごい!」1位は青崎有吾の『地雷グリコ』だった。

対象作品の期間は例年通りと考えると、2024年10月1日~2025年9月30日になるだろう。

 

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このミステリーがすごい!2026年版国内ベスト10の予想

それでは「このミステリーがすごい!」の2026年版国内ベスト10に入りそうな作品をリストアップしたい。


1位:ブレイクショットの軌跡 / 逢坂 冬馬

自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが、さて……。以降、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」――移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。人間の多様性と不可解さをテーマに、8つの物語の「軌跡」を奇跡のような構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作。

現時点でこのミステリがすごいの1位になりそうなのが『ブレイクショットの軌跡』だなと思っている。惜しくも受賞を逃したが、直木賞の候補にもなっていた。

逢坂冬馬の待望の新作『ブレイクショットの軌跡』は、自動車工場の期間工である本田昴が、勤務最終日に人気の四輪駆動車「ブレイクショット」のボルトを車体の内部に落とすのを目撃するところから物語が始まる群像劇である。この一台の車を起点に、様々な所有者や関係者の人間ドラマが連鎖的に展開されていく。

本作は、格差社会、LGBTQ、特殊詐欺といった現代社会が抱える多岐にわたる社会問題に鋭く切り込み、時に会議室からアフリカの紛争地帯、詐欺現場、青春の恋模様まで、舞台は広範に及ぶ。非正規雇用やSNS、マネーゲームといった問題がビリヤードのブレイクショットのように広がり、最終的にすべてが繋がる構成は圧巻である。努力が報われない若者たちの姿や、板金職人の父と息子の葛藤など、心揺さぶる人間ドラマが描かれ、圧倒的な構成力と社会への洞察が詰まった、2025年を代表するミステリー作品の一つと言っても過言ではない。

 

 

2位:熟柿 / 佐藤 正午

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。

佐藤正午の長編小説『熟柿』は、雨の夜に起きたひき逃げ事件をきっかけに人生が激変する主人公かおりの、およそ17年間にわたる流転の半生を描いた作品である。親戚の葬儀からの帰り道、泥酔した夫を乗せた車で老女を撥ねてしまうかおりは、罪を犯しながらも走り去り、後に逮捕され服役中に息子を出産する。その後も、我が子への想いが新たな問題を引き起こすなど、彼女は困難な運命に翻弄され続ける。

本作は、罪を犯した人間の責任と後悔、そして赦しを求める長い旅路を丁寧に追い、読者に深い読後感をもたらす。従来の佐藤作品のような複雑な構成ではなく、一人の女性の人生に寄り添うように描かれ、そのテーマは「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つ」という「熟柿」の言葉が象徴している。2016年から8年もの歳月をかけて連載され、第20回中央公論文芸賞を受賞した、まさに現代社会を映し出す傑作である。やはり、佐藤正午しか勝たん。

 

 

3位:禁忌の子 / 山口 未桜

禁忌の子

禁忌の子

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救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ!

昨年のミステリーランキングでも上位に入っていたが、山口未桜の『禁忌の子』もランクインするだろう。集計期間の関係から、昨年のこのミステリーがすごいにはランクインしていなかった。

山口未桜の『禁忌の子』は医療×本格ミステリだ。医療ミステリという枠組みの中で、生命倫理、親子関係、そして人間の業といった深淵なテーマが描かれている。 衝撃的な展開と緻密な謎解きが、読者を物語の世界に引き込む。 また、不妊治療や生殖医療といった現代社会の課題を提起し、読者に倫理的な問題について深く考えさせる作品である。

救急医の武田航のもとに、自分と瓜二つの溺死体が運び込まれる。身元不明のその遺体「キュウキュウ十二」の謎を追う中で、武田は自らの出生の秘密、そして生殖医療の闇に迫っていく。 武田は、中学時代の同級生で医師の城崎と共に調査を進め、ある産婦人科医に辿り着く。しかし、面会直前にその産婦人科医が死亡してしまう。 鍵を握る生島リブロクリニックで、武田と城崎は何を目撃するのか。

これはさすがにランクインするんじゃないかな。

 

まとめ

まだ集計期間があるのでこの記事は更新していこうと思う。まあ、『ブレイクショットの軌跡』、『塾柿』はランクインするんじゃないかなと。

 

 

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