日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

2025年版本格ミステリ・ベスト10のランキング入り作品を紹介!

毎年恒例のミステリーランキング、「本格ミステリ・ベスト10」が発表された。

今年も多くの話題作が登場し、ミステリファンにとっては見逃せないランキングとなっている。

この記事では2025年版の「本格ミステリ・ベスト10」に入ったミステリ小説を紹介したい。

 

 

 

「本格ミステリ・ベスト10」とは?

本格ミステリ・ベスト10」は、日本の本格ミステリに特化したランキングであり、探偵小説研究会が毎年発表している。1997年に始まり、毎年12月にその年の優れた本格ミステリ作品を選出する。ランキングの対象は、前年の11月から当年の10月までに発行された作品で、投票は有識者や読者によって行われる。

投票者は「本格」の定義を自由に解釈し、1位から5位までの作品を選ぶ。このランキングは、国内外の本格ミステリ作品を広く網羅しており、特に日本のミステリファンにとって重要な指標となっている。やはり他のミステリランキングに比べて本格ミステリ色が強い作品がランキング上位に選ばれれる傾向がある。

ちなみに「2024本格ミステリ・ベスト10」の第1位に輝いたのは、白井智之の『エレファントヘッド』だ。

 

2025本格ミステリ・ベスト10ランクイン作品

それでは「2025本格ミステリ・ベスト10」の国内ベスト10に輝いた作品を紹介したい。


1位:地雷グリコ / 青崎 有吾

射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

2025年の「このミステリーがすごい!」1位に輝いたのは青崎有吾の『地雷グリコ』だ。本作は、第24回本格ミステリ大賞(小説部門)、第77回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、第37回山本周五郎賞を受賞した話題作だ。『ライアーゲーム』のように風変わりなゲームを題材に登場人物が頭脳戦を繰り広げる頭脳バトル小説である。  
主人公の射守矢真兎は、西東京の高校に通う女子高生。 亜麻色のロングヘアにぶかぶかのカーディガンを羽織った、一見ちゃらんぽらんに見える少女だが、実は勝負事に滅法強いという一面を持っている。 彼女は、学園祭の場所取りやかるた部の雪辱を晴らすためなど、様々な理由で、グリコ、神経衰弱、ジャンケン、だるまさんがころんだ、ポーカーといった、誰もが知っているゲームにオリジナルルールを付加した頭脳ゲームで、様々な強敵と戦っていく。
「地雷グリコ」や「坊主衰弱」など、誰もが知っているゲームにオリジナルルールが加わることで、ゲームは心理戦を伴う頭脳戦へと変化するのが面白いところ。読者も真兎と一緒に頭脳戦に参加しているような感覚を味わえる 。

 

 

2位:ぼくは化け物きみは怪物 / 白井 智之

「本格ミステリ・ベスト10」2年連続1位! ランキングを席巻する鬼才の最新短編集! クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”。郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した“天使の子”。凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。白井智之は容赦しない。

2位は白井智之の『ぼくは化け物きみは怪物』だ。「本格ミステリ・ベスト10」で2年連続1位を獲得した著者の最新短編集となる本書は、 クラスメイト襲撃事件を捜査する小学生の名探偵、滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”など、個性的なキャラクターが登場する5つの短編が収録されています。
「怪物」をテーマにしたバラエティ豊かな作品集になっており、グロテスクな描写やブラックユーモアを交えながら緻密な論理で読者を魅了する。
各話の完成度が非常に高く、短編集でありながら読み応えのある作品である。 特に、表題作の「ぼくは化け物きみは怪物」は、白井智之さんの真骨頂とも言える衝撃的な作品だ。

 

3位:六色の蛹 / 櫻田 智也

昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった……。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『蝉(せみ)かえる』に続く、〈エリ沢泉〉シリーズ第3作!

3位の『六色の蛹』は、櫻田智也による〈魞沢泉〉シリーズの第3作である。主人公の魞沢泉は昆虫好きの心優しい青年であり、様々な事件に遭遇しながら真実を解き明かす。全六編から成るこの短編集では、彼が解決する謎と共に事件に関わる人々の心の痛みに寄り添う姿が描かれている。

各短編は色にちなんだタイトルが付けられ、例えば「白が揺れた」では銃撃事件の謎を追い、「赤の追憶」では少女の過去に迫る。前作に比べてインパクトは薄いものの、全体の構成は巧妙で、心温まるドラマが展開される。櫻田の丁寧な描写と推理力が光る作品であり、ミステリファンにとって必読の一冊である。

 

 

4位:伯爵と三つの棺 / 潮谷 験

フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。容疑者は「四つ首場」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?

4位の潮谷験伯爵と三つの棺』は、フランス革命の動乱が渦巻く18世紀後半のヨーロッパを舞台にした本格ミステリである。物語は、元・吟遊詩人が射殺される事件から始まる。容疑者は「四つ首城」の改修を任された三兄弟であり、彼らは容姿が似通った三つ子であるため、目撃者たちが犯人を特定できないという状況に陥る。

DNA鑑定や指紋鑑定が存在しない時代に、探偵は純粋な論理のみで真相に迫ることができるのかが、物語の大きなテーマとなっている。潮谷は、キャラクターの関係性や個人のアイデンティティを巧みに描写し、読者を引き込む。作品は、2025年の本格ミステリ大賞や吉川英治文学新人賞にノミネートされるなど、高い評価を受けている。

 

 

5位:永劫館超連続殺人事件 / 南海 遊

大嵐により陸の孤島(クローズド・サークル)と化した永劫館で起こる、最愛の妹の密室殺人と魔女の連続殺人。そして魔女の『死に戻り』で繰り返されるこの超連続殺人事件の謎と真犯人を、ヒースクリフは解き明かすことができるのかーー
『館』x『密室』x『タイムループ』の三重奏(トリプル)本格ミステリ。

5位の南海遊永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』は、館、密室、タイムループの三重奏を特徴とする本格ミステリである。物語は、母の危篤を知った没落貴族ブラッドベリ家の長男・ヒースクリフが、3年ぶりに生家である永劫館に帰るところから始まる。葬儀の参加者は11名で、最愛の妹や叔父、名探偵、そして魔女が含まれている。大嵐によって孤立した永劫館で、妹の密室殺人と魔女による連続殺人が発生する。さらに、魔女の「死に戻り」によって事件は繰り返され、ヒースクリフは真犯人を解き明かすために奮闘する。緻密なトリックと緊迫した展開が織りなす本作は、読者を引き込む魅力に満ちている。

 

 

6位:サロメの断頭台 / 夕木 春央

油絵画家の井口は、泥棒に転職した蓮野を連れて、数十年前に置時計を譲ってもらった、ロデウィック氏という発明家の富豪の元へ訪れる。芸術に造詣の深いロデウィック氏は後日、井口の絵を見るために彼のアトリエに訪れるが、立てかけてあった絵を見て、「この絵とそっくりな作品を見た憶えがある」と気が付いてーー?未発表の絵の謎を追って、井口と蓮野が大正時代を駆け回る!

6位の『サロメの断頭台』は、夕木春央による大正時代を舞台にしたミステリー小説である。物語は、油絵画家の井口が元泥棒の蓮野と共に、オランダの富豪ロデウィック氏の元を訪れるところから始まる。井口は、ロデウィック氏に自らの絵を見せるが、彼が「そっくりな作品をアメリカで見た」と告げたことで、盗作の疑いが浮上する。井口は自らの名誉と収入を守るため、真の盗作犯を探し始めるが、その過程で戯曲『サロメ』を模した連続殺人事件が発生する。美術と殺人が交錯する中、井口と蓮野は真相に迫るが、事件は次第に複雑さを増していく。緊迫感あふれる展開と、巧妙な謎解きが魅力の作品である。

 

 

7位:少女には向かない完全犯罪 / 方丈 貴恵

「確かに、幽霊も子供も一人じゃ何もできないよ。でも、私たちが力を合わせれば、大人の誰にもできないことがやれると思わない?」なにもできない幽霊となにもできない少女が織りなす頭脳戦の楽しみに満ちた爽快な復讐譚!

7位に輝いたのは方丈貴恵の『少女には向かない完全犯罪』という幽霊が登場する特殊設定ミステリだ。2年連続本格ミステリ大賞ノミネート作家による長編ミステリである本書は、両親を殺された少女・音葉と、幽霊となった完全犯罪請負人・黒羽烏由宇が協力して復讐に挑む物語である。

黒羽烏由宇は、ビルから転落し、臨死体験の中で幽霊となる。そこで彼は、両親を殺された少女・音葉に出会う。音葉には幽霊が見えるため、二人は協力して、黒羽を殺した犯人と音葉の両親を殺した犯人を探すことになる。

幽霊という特殊設定を巧みに利用した、斬新なミステリである。少女と幽霊という異色のコンビが、事件の真相に迫っていく過程がスリリングに描かれている。

音葉は、両親を殺された復讐のために、黒羽と協力するが、その過程で様々な困難に直面する。少女の成長物語としても、読み応えのある作品である。 

 

 

8位:黄土館の殺人 / 阿津川 辰海

館四重奏第三弾!次の館に、事件が起こる!新鋭の旗手による最新作! 事件は、岩に囲まれた館で起こる!

8位の阿津川辰海黄土館の殺人』は、『紅蓮館の殺人』から始まる「館四重奏」シリーズの第三弾である。本作では、孤立した荒土館で発生する連続殺人事件が描かれる。物語は、復讐を企てる男が地震による土砂崩れで目的地に辿り着けず、そこで出会った女性から交換殺人を持ちかけられるところから始まる。一方、館内では主人公の田所信哉と友人の三谷が、名探偵・葛城不在の中で次々と起こる奇妙な出来事に直面し、謎を解こうと奮闘する。

作品は、トリッキーな設定と緻密なプロットが特徴で、内外の視点から展開されるストーリーが読者を引き込む。地震というテーマを背景に、探偵としての存在意義や人間ドラマが巧みに描かれている。

 

 

9位:冬期限定ボンボンショコラ事件 / 米澤 穂信

小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。冬の巻ついに刊行。

9位に輝いたのは米澤穂信の『冬季限定ボンボンショコラ事件』だ。『春季限定いちごタルト事件』といった「小市民」シリーズの完結編となる作品だ。

小市民を志す小鳩君と小佐内さんが、高校生活の終わりに直面する「轢き逃げ事件」の謎に挑む。 物語は、大学受験を控えた高校3年生の冬、小鳩君が小佐内さんと一緒に下校中に轢き逃げに遭う場面から始まる。 彼は右足の骨を折るなどの重傷を負い、入院生活を余儀なくされる。 そんな中、小鳩君は3年前、中学3年生の時に起きた、同級生・日坂祥太郎の轢き逃げ事件を思い出す。 過去と現在の二つの轢き逃げ事件は、一体どのように繋がっているのか?
これまでのシリーズ作品と同様に、日常の謎を丁寧に解き明かしていく展開が魅力的。小鳩君と小佐内さんの、互恵関係に基づいた独特な距離感が、本作でも健在だ。

 

10位:案山子の村の殺人 / 楠谷 佑

案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる雪の密室の様相を呈していた――。“楠谷佑”のペンネームで活動する合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ第一弾。本格推理の俊英が二度に亙る〈読者への挑戦状〉を掲げて謎解きの愉しみを満喫させる、渾身の推理巨編!

10位に輝いた楠谷佑の『案山子の村の殺人』は、雪に閉ざされた宵待村を舞台にした本格ミステリである。まさに王道の本格ミステリで、本格ミステリ・ベスト10ならではの選出と思う。

物語は、案山子に毒の矢が射込まれ、さらに別の案山子が消失する事件から始まる。やがて、村で殺人事件が発生し、現場は「雪の密室」と化す。探偵役は、大学生の従兄弟コンビ、宇月理久と篠倉真舟であり、彼らは村の伝承や人間関係を探りながら真相に迫る。作品は、読者への挑戦状を二度にわたり挿入し、謎解きの楽しさを提供する。正統派ミステリの魅力を存分に味わえる一作である。

 

 

まとめ

本格ミステリ・ベスト10」には、他のミステリランキングと比較して本格ミステリ色の強い作品が揃ったなと思う。このランキングを参考にミステリを読んでみるのはどうだろう。

 

 

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