日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

ミステリが読みたい!2025年版のランキング上位10作品を紹介!

毎年恒例のミステリーランキング、「ミステリが読みたい!」の2025年版が発表された。

今年も多くの話題作が登場し、ミステリファンにとっては見逃せないランキングとなっている。

この記事では2025年版の「ミステリが読みたい!」に入ったミステリ小説を紹介したい。

 

 

 

「ミステリが読みたい!」とは?

早川書房の「ミステリが読みたい!」は、毎年年末に発表される日本のミステリー小説ランキングである。このランキングは、読者の投票によって決定され、国内外の優れたミステリー作品を広く紹介することを目的としている。特に、読者の支持を受けた作品が上位にランクインし、ミステリー愛好者にとってのバイブル的存在となっている。ランキングは、各年のミステリーのトレンドや人気作を反映し、読者に新たな発見を提供する。これにより、ミステリーの魅力を再認識させるとともに、作家や作品の知名度向上にも寄与している。

 

 

ミステリが読みたい!2025年版国内ベスト10

それでは「ミステリが読みたい!」の2025年版国内ベスト10に輝いた作品を紹介したい。


1位:地雷グリコ / 青崎 有吾

射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

2025年の「ミステリが読みたい!」1位に輝いたのは青崎有吾の『地雷グリコ』だ。本作は、第24回本格ミステリ大賞(小説部門)、第77回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、第37回山本周五郎賞を受賞した話題作だ。『ライアーゲーム』のように風変わりなゲームを題材に登場人物が頭脳戦を繰り広げる頭脳バトル小説である。  
主人公の射守矢真兎は、西東京の高校に通う女子高生。 亜麻色のロングヘアにぶかぶかのカーディガンを羽織った、一見ちゃらんぽらんに見える少女だが、実は勝負事に滅法強いという一面を持っている。 彼女は、学園祭の場所取りやかるた部の雪辱を晴らすためなど、様々な理由で、グリコ、神経衰弱、ジャンケン、だるまさんがころんだ、ポーカーといった、誰もが知っているゲームにオリジナルルールを付加した頭脳ゲームで、様々な強敵と戦っていく。
「地雷グリコ」や「坊主衰弱」など、誰もが知っているゲームにオリジナルルールが加わることで、ゲームは心理戦を伴う頭脳戦へと変化するのが面白いところ。読者も真兎と一緒に頭脳戦に参加しているような感覚を味わえる 。

 

 

2位:冬期限定ボンボンショコラ事件 / 米澤 穂信

小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。冬の巻ついに刊行。

2位に輝いたのは米澤穂信の『冬季限定ボンボンショコラ事件』だ。『春季限定いちごタルト事件』といった「小市民」シリーズの完結編となる作品だ。

小市民を志す小鳩君と小佐内さんが、高校生活の終わりに直面する「轢き逃げ事件」の謎に挑む。 物語は、大学受験を控えた高校3年生の冬、小鳩君が小佐内さんと一緒に下校中に轢き逃げに遭う場面から始まる。 彼は右足の骨を折るなどの重傷を負い、入院生活を余儀なくされる。 そんな中、小鳩君は3年前、中学3年生の時に起きた、同級生・日坂祥太郎の轢き逃げ事件を思い出す。 過去と現在の二つの轢き逃げ事件は、一体どのように繋がっているのか?
これまでのシリーズ作品と同様に、日常の謎を丁寧に解き明かしていく展開が魅力的。小鳩君と小佐内さんの、互恵関係に基づいた独特な距離感が、本作でも健在だ。
本作では、小鳩君と小佐内さんの過去が明らかになる点が、大きなポイントだ。 なぜ二人が「小市民」になろうとしたのか、その理由を知ることで、二人の関係性がより深く理解できるようになる。

 

 

3位:ぼくは化け物きみは怪物 / 白井 智之

「本格ミステリ・ベスト10」2年連続1位! ランキングを席巻する鬼才の最新短編集! クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”。郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した“天使の子”。凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。白井智之は容赦しない。

3位は白井智之の『ぼくは化け物きみは怪物』だ。「本格ミステリ・ベスト10」で2年連続1位を獲得した著者の最新短編集となる本書は、 クラスメイト襲撃事件を捜査する小学生の名探偵、滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”など、個性的なキャラクターが登場する5つの短編が収録されています。
「怪物」をテーマにしたバラエティ豊かな作品集になっており、グロテスクな描写やブラックユーモアを交えながら緻密な論理で読者を魅了する。
各話の完成度が非常に高く、短編集でありながら読み応えのある作品である。 特に、表題作の「ぼくは化け物きみは怪物」は、白井智之さんの真骨頂とも言える衝撃的な作品だ。

 

 

4位:檜垣澤家の炎上 / 永嶋 恵美

横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは――。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。

4位に輝いた『檜垣澤家の炎上』は、横濱の富豪一族・檜垣澤家を舞台にした長編ミステリである。当主の妾だった母を亡くしたかな子が、女系一族の中で生き抜くために奮闘する姿を描いた作品だ。
物語の舞台は明治末期の横浜。 貿易商・檜垣澤商店の当主・要吉の妾腹として生まれた高木かな子は、7歳の時に母を亡くし、檜垣澤家に引き取られる。 そこは、大奥様のスヱを筆頭に、女系一族が権力を握る家でだった。 かな子は、一族の中で生き抜くために、持ち前の知性と機転を活かして、様々な策略を巡らせていく。
明治から大正にかけての時代背景を緻密に描写し、当時の社会や文化を生き生きと描き出している点も特徴だ。かな子の成長物語としても読み応えがあり、ミステリだけでなく、家族小説としても楽しめる作品である。 例えれば『細雪』×『華麗なる一族』×ミステリのような内容だ。

 

 

5位:少女には向かない完全犯罪 / 方丈 貴恵

「確かに、幽霊も子供も一人じゃ何もできないよ。でも、私たちが力を合わせれば、大人の誰にもできないことがやれると思わない?」なにもできない幽霊となにもできない少女が織りなす頭脳戦の楽しみに満ちた爽快な復讐譚!

5位に輝いたのは方丈貴恵の『少女には向かない完全犯罪』という幽霊が登場する特殊設定ミステリだ。2年連続本格ミステリ大賞ノミネート作家による長編ミステリである本書は、両親を殺された少女・音葉と、幽霊となった完全犯罪請負人・黒羽烏由宇が協力して復讐に挑む物語である。

黒羽烏由宇は、ビルから転落し、臨死体験の中で幽霊となる。そこで彼は、両親を殺された少女・音葉に出会う。音葉には幽霊が見えるため、二人は協力して、黒羽を殺した犯人と音葉の両親を殺した犯人を探すことになる。

幽霊という特殊設定を巧みに利用した、斬新なミステリである。少女と幽霊という異色のコンビが、事件の真相に迫っていく過程がスリリングに描かれている。

音葉は、両親を殺された復讐のために、黒羽と協力するが、その過程で様々な困難に直面する。少女の成長物語としても、読み応えのある作品である。 

 

 

6位:伯爵と三つの棺 / 潮谷 験

フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。容疑者は「四つ首場」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?

6位の潮谷験伯爵と三つの棺』は、フランス革命の動乱が渦巻く18世紀後半のヨーロッパを舞台にした本格ミステリである。物語は、元・吟遊詩人が射殺される事件から始まる。容疑者は「四つ首城」の改修を任された三兄弟であり、彼らは容姿が似通った三つ子であるため、目撃者たちが犯人を特定できないという状況に陥る。

DNA鑑定や指紋鑑定が存在しない時代に、探偵は純粋な論理のみで真相に迫ることができるのかが、物語の大きなテーマとなっている。潮谷は、キャラクターの関係性や個人のアイデンティティを巧みに描写し、読者を引き込む。作品は、2025年の本格ミステリ大賞や吉川英治文学新人賞にノミネートされるなど、高い評価を受けている。

 

 

7位:虚史のリズム / 奥泉 光

新しい戦前? 否、死者の声は響き続けてきた――ある殺人事件を機に巻き起こる、国家機密の「K文書」を巡る謎……。近現代史の魔法使いが仕掛ける、至高のメガ、もといギガ、もといテラ・ノベル!

奥泉光の『虚史のリズム』は、1947年の占領下日本を舞台にしたミステリーである。物語は、元陸軍中将棟巍正孝の殺害事件を中心に展開し、国家機密の「K文書」を巡る謎が絡み合う。主人公の石目鋭二は、自称探偵として事件解決に挑むが、彼の周囲には多様な人物が交錯し、戦後の混乱と人間の心理が描かれる。奥泉の独自の視点が光る本作は、ミステリー、SF、歴史小説の要素を融合させた超弩級の作品であり、全体で1091ページに及ぶ。文学的な深みと複雑なプロットが特徴で、読者を引き込む力を持つ。

 

 

8位:六色の蛹 / 櫻田 智也

昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった……。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『蝉(せみ)かえる』に続く、〈エリ沢泉〉シリーズ第3作!

8位の『六色の蛹』は、櫻田智也による〈魞沢泉〉シリーズの第3作である。主人公の魞沢泉は昆虫好きの心優しい青年であり、様々な事件に遭遇しながら真実を解き明かす。全六編から成るこの短編集では、彼が解決する謎と共に事件に関わる人々の心の痛みに寄り添う姿が描かれている。

各短編は色にちなんだタイトルが付けられ、例えば「白が揺れた」では銃撃事件の謎を追い、「赤の追憶」では少女の過去に迫る。前作に比べてインパクトは薄いものの、全体の構成は巧妙で、心温まるドラマが展開される。櫻田の丁寧な描写と推理力が光る作品であり、ミステリファンにとって必読の一冊である。

 

 

9位:乱歩殺人事件 / 芦辺 拓

江戸川乱歩のいわくつきの未完作「悪霊」。デビュー百年を越え、いま明かされる、犯人・蔵の密室・謎の記号の正体。そして、なぜ本作が、未完となったのか――乱歩の中絶作を、芦辺拓が書き継ぎ完結させる! そのうえ、物語は更なる仕掛けへ……。

9位の芦辺拓乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび』は、江戸川乱歩の未完の名作「悪霊」を現代に蘇らせた作品である。乱歩が1933年に連載を開始したこの作品は、わずか3回で中絶したが、芦辺はその謎を引き継ぎ、物語を完結させた。

物語は、美しき未亡人が密室で惨殺され、現場には不可解な記号が残されるという衝撃的な事件から始まる。芦辺は、乱歩の独特な文体を巧みに模倣しつつ、現実の乱歩周辺のエピソードや海外ミステリの要素を取り入れ、錯綜した物語を構築した。作品は、乱歩の未完の意図を探ると同時に、彼がなぜこの作品を完結できなかったのかという謎にも迫る。ミステリ愛好者にとって、必読の一冊だ。

 

 

10位:難問の多い料理店 / 結城 真一郎

ビーバーイーツ配達員として日銭を稼ぐ大学生の僕は、注文を受けて向かった怪しげなレストランで、オーナーシェフと出会う。 彼は虚空のような暗い瞳で、「お願いがあるんだけど。報酬は1万円」と、噓みたいな儲け話を提案し、あろうことか僕はそれに乗ってしまった。 そうして多額の報酬を貰っているうちに、僕はあることに気づく。 どうやらこの店は「ある手法」で探偵業も担っているらしいと。 不自然な焼死体が出たアパート火災、空室に届き続ける置き配、 謎の言葉を残して捕まった空き巣犯、なぜか指が二本欠損した状態の轢死体……。 オーナーは、配達員に情報を運ばせることで、どんな難問も華麗に解いてしまう。 そして、配達員にこう伝えるのだ。 「もし口外したら、命はない」

10位に輝いた結城真一郎の『難問の多い料理店』は、フードデリバリー専門の怪しげなレストランを舞台にした連作短編集である。主人公はビーバーイーツの配達員として働く大学生で、彼は注文を受けて向かったレストランでオーナーシェフと出会う。シェフは虚空のような暗い瞳を持ち、報酬を提示しながら依頼を持ちかける。物語は、焼死体が出たアパート火災や、謎の言葉を残した空き巣犯など、様々な事件を通じて展開される。配達員は情報を運ぶことで、シェフの名推理を助ける役割を果たす。作品は、現代社会のガジェットを取り入れた新しいミステリーとして、多様な伏線が巧みに張り巡らされている。読者は、驚きと緊張感を持って物語を楽しむことができる。

 

 


まとめ

「ミステリが読みたい!2025」国内編ベスト10には、個性豊かな作品が揃ったなと思う。本格ミステリから純文学色の強い作品、エンターテインメント性の高い作品まで、幅広いジャンルの作品がランクインしている。

このランキングを参考にミステリを読んでみるのはどうだろう。

 

 

 

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