小説の舞台として空港が魅力的に感じるのは私だけだろうか?
新天地へのスタート地点やたくさんの人が行き交う空港や飛行機は小説の舞台としてうってつけだと思っている。
この記事では、空港や飛行機を舞台にした小説を紹介したい。
空港にて / 村上 龍
コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム――どこにでもある場所でおきた8つの希望の物語。クリスマスイブの夜、新宿を1人で歩きながら「いつかモロッコへ行こう」と言った男性のことを考える27歳の女性。コンビニでサンディエゴの映画技術学校へ行くことを思案する22歳の青年。アフガニスタンの地雷被害者に義足を作りたいと思う、33歳の風俗嬢…。8人の登場人物がそれぞれ抱く個人的な希望を、細かな情景描写とともに書き込んだ短編集。
村上龍の『空港にて』は、コンビニや居酒屋、公園、カラオケルームなどとある場所にフォーカスし、人生の転換点や希望を描いた短編集だ。
短編集に収録されている「空港にて」が、タイトル通り空港を舞台にした小説である。この「空港にて」だが、村上龍本人が最高の短編小説とコメントしている小説だ。
主人公は空港である男を待っている女性だ。空港を舞台に、彼女の人生と決意が描かれている。
海外という新天地に希望を託すという訳ではなく、日本国内の地方都市に希望を見出すというのが新鮮だ。
あの空の下で / 吉田 修一
飛行機に乗るたび願い事をする理由。自転車を盗まれた最悪な日の出会い…懐かしく胸を締めつける12の短編と、東南アジアから北欧まで、6つの都市をめぐるエッセイを収録。旅情あふれる作品集。
吉田修一の『あの空の下で』は、ANAグループの機内誌『翼の王国』の連載をまとめた短編集である。読むと旅行に行きたくなるような短編集だ。
飛行機の機内誌に連載されたこともあり、どの短編も飛行機や旅行がテーマになっている。
どの作品も10ページくらいなので、スキマ時間でもサクッと読める。空港での待ち時間や飛行機での移動時間に読むのをおすすめしたい。
海外にまつわるエッセイも収録されている。特に「オセロ」というエッセイが素敵でおすすめしたい。
空港時光 / 温 又柔
羽田⇔台北――空港を舞台に鮮やかに浮かびあがる10の人生、そして新しい生のかたち。各紙絶賛の表題作「空港時光」と傑作エッセイ「音の彼方へ」。いま最も注目される気鋭作家の飛翔作。
温又柔の『空港時光』は、空港を舞台にした10編のショートストーリーと1編のエッセイが収められた作品集だ。
作者の温又柔(おん・ゆうじゅう)は台湾生まれ日本育ちの作家である。それもあって、羽田空港から台北の移動に内容がフォーカスされている。
台湾に興味がある、台湾に行きたいと思っている人に特におすすめしたいなと思う。
ちなみに、羽田空港から台湾に行くときの私の愛読書になっている。ああ、台湾に行きたい。
あぽやん / 新野 剛志
あぽやん——それは空港で旅客を送りだすプロ中のプロ。パスポートがない! 予約が消えた! 発券ミス! ……空港のカウンター裏で起こる様々なトラブルはあぽやんにおまかせ! 読めば元気がわいてくる。泣いて笑って、心温まる空港物語!
『あぽやん』は空港の裏側を描いた新野剛志の連作短編小説だ。
タイトルにある「あぽやん」とは、空港で旅客を送りだす旅行代理店員を指す業界用語である。作者自身もあぽやんとして4年半働いていたようだ。
お客さんを無事に送り出すために、さまざまなトラブルに対応し、奔走するあぽやんの姿を見ていると元気をもらえる。
登場人物のキャラクターもよく、文章のテンポも良いので読みやすい。空港の舞台を舞台裏を描いた珍しいお仕事小説だ。
ROMES 06 / 五條 瑛
世界最先端の施設警備システムROMES(ロメス)を擁する西日本国際空港に届いた複数の脅迫状。そしてある日、ROMES(ロメス)の警報装置が作動した! だがROMESの全貌を知るのは、西空警備チームでも最高運用責任者の成嶋優弥ただひとり。愛犬ハルとシステムしか信じない若き天才・成嶋と、テロリストたちの知と情を賭けた攻防の行方は…?
五條瑛の『ROMES 06』は、空港を舞台にテロリストとの戦いを描いたサスペンスだ。
タイトルにもなっている「ROMES」とは、世界最先端の技術を駆使して作られた施設警備システムのことだ。「ROMES」の生みの親である成嶋とテロリストとの闘いが描かれ、手に汗握る展開が繰り広げられる。