日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

心を揺さぶる!感傷的でエモい恋愛小説をまとめてみた

エモい」という言葉は、英語の「emotional(エモーショナル)」が由来の若者言葉だ。

ニュアンスとしては、「感情が揺り動かされる」・「切ない」といった感じだろうか。昔でいうところの「をかし」かもしれない。いや違うか。

この「エモい」というフレーズは小説や音楽、映画などを形容する時に使われたりする。「この音楽めっちゃエモい」みたいな。

小説で言ったら、エモいと形容されるのが多いのは恋愛小説だろうか。

 

この記事では、感傷的で「エモい」恋愛小説を紹介していく。

 

 

 

『ボクたちはみんな大人になれなかった』 / 燃え殻

それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在をSNSがつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。

SNS発信でエモすぎると話題になった恋愛小説が燃え殻の『ボクたちはみんな大人になれなかった』だ。SNSの時代のラブストーリーとあって、元カノにFacebookで友達申請したところから小説は始まる。忘れられない恋をエモーショナルに描いている。

エモさを引き立てているのは、作中に散りばめられた固有名詞だ。日常の描写に固有名詞を使うとエモーショナルな描写ができる。例えば、「ラフォーレ原宿」、「小沢健二」など、その当時の生活を鮮明に想像させる工夫がなされている。

 

 

『パイロット・フィッシュ』 / 大崎 善生

かつての恋人から19年ぶりにかかってきた一本の電話。アダルト雑誌の編集長を務める山崎がこれまでに出会い、印象的な言葉を残して去っていった人々を追想しながら、優しさの限りない力を描いた青春小説。

大崎善生の『パイロットフィッシュ』は、恋愛の喪失感を透明感あふれる文体で描いた恋愛小説だ。タイトルにもなっているパイロットフィッシュとは、熱帯魚を飼う前にバクテリアを増やし適した環境にするために飼う魚のことだ。

この小説では、かつての恋人や関わりのあった人々との思い出を辿っていく小説だ。過去に忘れられない恋愛があった人には胸に迫るものがあるだろう。

 

 

『ノルウェイの森』 / 村上 春樹

十八年という歳月が流れ去ってしまった今でも、僕はあの草原の風景をはっきりと思い出すことができる――。1969年、大学生の僕、死んだ友人の彼女だった直子、そして同じ学部の緑、それぞれの欠落と悲しみ――37歳になった僕は、機内に流れるビートルズのメロディーに18年前のあの日々を思い出し、激しく心をかき乱されていた。

村上春樹の『ノルウェイの森』は、二人の女性の間で揺れ動くワタナベの喪失と再生の物語だ。村上春樹といえばこの小説を思い浮かべるのではないだろうか。話の内容、性描写の多さ故にかなり好き嫌いが分かれると思う。

主人公のワタナベは死んだ友人の彼女だった直子、同じ学部の緑の二人の女性の間で揺れ動く。

 

 

『スプートニクの恋人』 / 村上 春樹

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。―そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー。

村上春樹の『スプートニクの恋人』は、リリカルな文体が魅力の恋愛小説だ。

『スプートニクの恋人』の文体は比喩が過剰に使われていて、村上春樹作品の中でも特にリリカルでエモーショナルだ。すみれとミュウと僕のどこにも行くことが出来ない恋をリリカルな文体で描いている。全体的に感傷的な雰囲気なので、『ノルウェイの森』が好きな人ならはまると思う。

 

 

『秒速5センチメートル』 / 新海 誠

「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」。いつも大切なことを教えてくれた明里、彼女を守ろうとした貴樹。二人の恋心の彷徨を描く劇場アニメーション『秒速5センチメートル』を監督自ら小説化。

『君の名は。』で知られる新海誠が『秒速5センチメートル』を自らノベライズ。『秒速5センチメートル』は新海誠が注目を集めるきっかけとなった作品だ。この小説版では映画では詳しく描かれなかった最終章が深く掘り下げて描かれている。

タイトルが意味するのは桜の花びらが落ちるスピードのことだ。時間とともに移ろいゆく貴樹と明里の二人の心の距離を叙情的に描いている。貴樹は失われた過去の恋愛の呪縛から逃れることが出来ず、自己愛ゆえに周りの人を傷つけてしまう。この『秒速5センチメートル』では、過去の恋愛を引きずり、感傷に浸る自分に陶酔している姿を、叙情的な文章で極限まで美しく描いている。

新海誠は村上春樹から影響を受けていると公言していることもあり、文体に村上春樹ぽさがある。

 

 

『明け方の若者たち』 / カツセ マサヒコ

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」その16文字から始まった、沼のような5年間。
明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生"に打ちのめされていく。深夜の高円寺の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが、美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。

『明け方の若者たち』は、Webライター・文筆家カツセマサヒコの小説だ。カツセマサヒコは、エモーショナルなツイートで注目を集めているインフルエンサーだ。『明け方の若者たち』はカツセマサヒコのデビュー作だが、クリープハイプの尾崎世界観や小説家の村山由佳といった著名人から推薦コメントが寄せられたこともあって話題を集めた。

同時代に青春を過ごした人なら刺さる音楽などの固有名詞が散りばめられていて、エモーショナルな小説に仕上がっている。自分も読んでいて、23・24歳の頃のマジックアワーのことを思い出していた。読んだ人が自分の青春時代を思い出すような小説でもある。

『明け方の若者たち』でも固有名詞が多く散りばめられている。エモさで話題を集めた本書だが、その秘密は固有名詞にあるのではないかと思う。

『明け方の若者たち』では、BUMP OF CHICKENの「ロストマン」やthe pillows「ハイブリッドレインボウ」が作中に登場して、小説を盛り上げる。僕はここら辺の世代なので、選曲といいどハマりした。

 

 

『真夜中の五分前』 / 本多 孝好

少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side-Aから始まる新感覚の恋愛小説。偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。

『真夜中の五分前』は恋人を失った主人公の喪失と再生をミステリー的な要素も絡めて描いた新感覚の小説だ。ミステリー的な『ノルウェイの森』と言えるかも。恋人を交通事故で失った「僕」は一卵双生児のかすみに出会う。この出会いがきっかけで「僕」は新しい一歩を踏み出すことになるのだが、運命は「僕」を奇妙な世界に運び込んで行く。最後には驚愕のエンディングが待ち受けている。真夜中の5分前というタイトルや5分が意味することがとてもお洒落。

 

 

『ラヴレター』 / 岩井 俊二

雪山で死んだフィアンセ・樹の三回忌に博子は、彼が中学時代に住んでいた小樽に手紙を出す。天国の彼から? 今は国道になっているはずのその住所から返事がきたことから、奇妙な文通がはじまった。

日本を代表する映画監督・岩井俊二の名作『ラヴレター』を監督本人が小説化。奇妙な文通から始まる、心揺さぶる恋物語。

 

 

 

『四月になれば彼女は』 / 川村 元気 

4月、精神科医の藤代のもとに、初めての恋人・ハルから手紙が届いた。“天空の鏡”ウユニ塩湖からの手紙には、瑞々しい恋の記憶が書かれていた。だが藤代は1年後に結婚を決めていた。愛しているのかわからない恋人・弥生と。失った恋に翻弄される12か月がはじまる

川村元気『四月になれば彼女は』は、失われてしまった恋について描かれた切ない恋愛小説だ。「人を愛するということはどういうことなのか」といった愛に関する哲学について描かれている。お洒落に描いた恋愛小説。

 

 

『劇場』 / 又吉 直樹 

高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。



 

『1ミリの後悔もない、はずがない』 / 一木 ケイ

「俺いま、すごくやましい気持」。ふとした瞬間にフラッシュバックしたのは、あの頃の恋。できたての喉仏が美しい桐原との時間は、わたしにとって生きる実感そのものだった。逃げだせない家庭、理不尽な学校、非力な子どもの自分。誰にも言えない絶望を乗り越えられたのは、あの日々があったから。桐原、今、あなたはどうしてる? ――忘れられない恋が閃光のように突き抜ける、究極の恋愛小説。

 

 

『よるのふくらみ』 / 窪 美澄

同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが――。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。

 

 

以上、エモーショナルな恋愛小説のまとめでした。是非是非気になる作品は読んでみて!