日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

クリープハイプ尾崎世界観も芥川賞候補に!第164回芥川龍之介賞の候補作まとめ

第164回芥川龍之介賞の候補作が発表された!

1月といえば芥川賞受賞作発表の月ですね。今回の候補作品は話題作が豊富。クリープハイプの尾崎世界観も芥川賞候補にノミネートされています。今回の芥川賞候補って「新潮」・「群像」・「文藝」・「文學界」・「すばる」の五大文芸誌からそれぞれ候補が出てる!今回は芥川賞候補にノミネートされた小説と作家についてざっくり紹介したいと思います。

 

 

 


宇佐美りん『推し、燃ゆ』(文藝秋季号)

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

 

2019年に『かか』で第56回文藝賞を受賞をしデビュー。同作は2020年、第33回三島由紀夫賞を受賞している。そして二作目の「推し、燃ゆ」で芥川賞候補に。勢いのある新人作家だ。『推し、燃ゆ』は、主人公の一人称語りでアイドルを推すことをリアルに描いている。

 


尾崎世界観『母影』(新潮十二月号)

母影(おもかげ)

母影(おもかげ)

 

 クリープハイプのボーカル・ギター尾崎世界観が芥川賞候補に。今回の「母影」で初の芥川賞候補となった。これまでにいくつか作品を発表していて、半自伝的小説『祐介』などがある。「祐介」は尾崎祐介が尾崎世界観になるまでの話だ。千早茜との共著『犬も食わない』でも話題を集めた。今回候補になった「母影」は、自伝的小説ではなく小学校低学年の女の子の視点から見た母親の姿を描いている。

 

 

木崎みつ子『コンジュジ』(すばる十一月号)

コンジュジ (集英社文芸単行本)

コンジュジ (集英社文芸単行本)

 

「コンジュジ」で第44回すばる文学賞を受賞しデビュー。デビューしたてなので、『コンジュジ』で初の芥川賞候補。すばる文学賞受賞作で芥川賞候補になっている。「すばる」掲載作品が芥川賞をとるのは最近では珍しいが、すばる文学賞受賞作で芥川賞受賞となれば金原ひとみの『蛇にピアス』以来の快挙だ。タイトルの「コンジュジ」というのは、ポルトガル語で「配偶者」を意味する。実父から性暴力を受ける辛い現実、架空のバンドの緻密な自伝、好きなバンドのボーカルに愛されているという妄想、の3つの物語が重なって、奥行きのある小説になっている。文体のユーモアもすごく良い。

 

 

砂川文次『小隊』(文學界九月号)

小隊

小隊

  • 作者:砂川 文次
  • 発売日: 2021/02/11
  • メディア: 単行本
 

「市街戦」で第121回文學界新人賞を受賞しデビュー。以前『戦場のレビヤタン』で芥川賞候補になっている。今回の『小隊』で2回目の芥川賞候補。元自衛官という異色の経歴を持つ。元自衛官とあってか、戦争や兵隊をモチーフにした小説が多く、カフカ的な作風が特徴だ。最近では、新型感染症をモチーフにした『臆病な都市』が話題を集めていた。『臆病な都市』は新型コロナ流行前に書かれていたこともあり、未来を予見した小説と評された。今回候補になった『兵隊』は、北海道にロシア軍が上陸し、日本の自衛隊と衝突するという話だ。

 

 

乗代雄介『旅する練習』(群像十二月号)

旅する練習

旅する練習

  • 作者:乗代 雄介
  • 発売日: 2021/01/14
  • メディア: 単行本
 

「十七八より」で第58回群像新人文学賞を受賞しデビュー。『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞している。以前には「最高の任務」で芥川賞候補に挙がっている。今回の「旅する練習」で2回目の芥川賞候補。書物の題名や引用、エピソードが読み込まれる作風が特徴だ。「旅する練習」は、サッカー少女とその叔父が利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出るという話だ。コロナで予定がなくなるなどタイムリーな出来事が小説中に登場する。

 

芥川賞受賞作が発表されるのは2021年1月20日。いったいどの作品が芥川賞を受賞するのか。