日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

丑年の始まりにぴったりな小説 / 「牛」 岡本 綺堂

あけましておめでとうございます。今年は丑年なので、タイトルに牛と入る小説を探していたらたまたま出会ったのが『牛』だ。まさに丑年にぴったり。作者は岡本綺堂で、他の作品には『半七捕物帳』などがある。また怪奇譚なども書いており、『牛』にも少しホラー要素がある。

『牛』は、青年が老人から「干支の牛にちなんだ話」について行く話だ。青年は「牛・新年・芸妓」に関連する話を依頼して、老人がそれに答えたのだ。まさに正月あたりの話なので、タイミングがぴったりな小説だった。

内容は、正月に牛車の牛が大暴れして怪我人や死人が出る話だ。牛が大暴れしたのはひょんな偶然であり、色々と考えさせられる。大半は牛がひたすらに大暴れする話なのだが、最後に一捻りある。

牛に襲われた芸妓の一人は一命をとりとめていた。その芸妓は、男と駆け落ちしようとするのだが、牛の姿を見かけて腰を抜かしてしまう。結局、それが原因で芸妓と男の駆け落ちはしっぱいしてしまう。芸妓が見かけた「牛」だが、芸妓以外にその牛の姿を見かけたものはいなかった。芸妓が見たのはトラウマによる幻覚だったのだろうか、それとも…

サクッと読める短編小説なので、丑年記念に読んでみてください。著作権が切れているみたいなので、青空文庫電子書籍で無料で読めます。

 

牛つながりで、昔の話になるが天牛堺書店が倒産してしまったのは悲しすぎるな。 

 

牛