日々の栞

生活にカルチャーを。本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

東野圭吾の「ラプラスの魔女」シリーズの読む順番は?

東野圭吾は、ガリレオシリーズ加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。

東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。『探偵ガリレオ』などガリレオシリーズは福山雅治主演でドラマ化され、かなり話題になった。他に有名な作品を列挙してみると『白夜行』とか『秘密』がある。映画化もよくされていて、『真夏の方程式』や『ラプラスの魔女』が公開されている。

そんな大人気作家・東野圭吾だが、著作の国内累計発行部数が1億部を突破した。国内累計発行部数は2023年時点で1億77,380部である。

また、東野圭吾作品の人気は国内にとどまらず、海外でも幅広く翻訳されている。現在は37の国と地域で出版中のようだ。その推定累計発行部数は約6800万部で、全世界の推定累計発行部数は1億6,800万部を超える。

そんな東野圭吾の作品の数ある人気シリーズの中でも、「ラプラスの魔女」シリーズは、科学と超常現象を巧みに融合させた、意欲的かつ魅力的なシリーズである。

 

この記事では東野圭吾の「ラプラスの魔女シリーズ」の全作品の紹介とシリーズの読む順番を紹介したい。

 

 

東野圭吾の「ラプラスの魔女」シリーズとは?

東野圭吾の「ラプラスの魔女」シリーズは、科学と超常現象を巧みに融合させた、意欲的かつ魅力的なシリーズだ。ラプラスの魔女シリーズは、東野圭吾の作品群の中でも、物理学、地球化学、脳科学、AIといった先端科学の知見と、未来予測という超常的な能力を正面から扱い、SFミステリとしての色彩を強く放っている点で、特徴的だ。

加賀恭一郎シリーズやガリレオシリーズが主に現実的な警察捜査や物理法則に基づいたトリック解明に焦点を当てるのとは対照的に、本シリーズは異なる次元の謎解きと人間ドラマを展開する。作者自身がデビュー30周年に際し「これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。そしたらこんな作品ができました」と語るように 、既存の枠組みを打ち破り、新たな地平を切り拓こうとした野心作がラプラスの悪魔だ。
タイトルにある「ラプラスの悪魔」というのは、18世紀から19世紀にかけて活躍したフランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラスが提唱した思考実験上の存在を指す。「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態とエネルギーを知り尽くし、かつそれを解析できるだけの知性が存在するならば、その知性にとっては、未来は完全に予測可能である」という仮説に基づいている 。この、全知全能にも等しい未来予見能力を持つ存在、ラプラスの悪魔という概念が、シリーズの中心人物である羽原円華の特殊な能力を象徴している。

 

 

ラプラスの魔女シリーズの読む順番は?

ラプラスの悪魔シリーズは、『ラプラスの魔女』、『魔力の胎動』、『魔女と過ごした七日間』 の3作品である。ラプラスの悪魔シリーズの第1作は『ラプラスの魔女』である。『魔力の胎動』はシリーズ第二作であるが、時間軸上は『ラプラスの魔女』よりも前の出来事を描いた前日譚である。『魔女と過ごした七日間』はシリーズ第三作であり、『ラプラスの魔女』の出来事の後を描いた直接的な続編にあたる。

東野圭吾の「ラプラスの悪魔シリーズ」の読む順番だが、基本的に刊行された順番で読んでみてほしい。これがオーソドックスな読み方だと思う。

ラプラスの悪魔シリーズ」の刊行順①ラプラスの魔女、②魔力の胎動、③魔女と過ごした七日間である。

では、簡単にこれまでの「ラプラスの悪魔シリーズ」の作品を刊行順に紹介しようと思う。基本的にはこの順番で読み進めてほしい。



①ラプラスの魔女

遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きた。検証に赴いた地球化学研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ!

「ラプラスの悪魔シリーズ」の第1作が、シリーズ名にあるように『ラプラスの魔女』だ。主要キャラクターの羽原 円華は未来の物理現象を予測する能力を持っており、自身を「ラプラスの魔女」と称する。

物語は、遠く離れた二つの温泉地、赤熊温泉と苫手温泉で、相次いで硫化水素中毒による死亡事故が発生するところから始まる。赤熊温泉の事故調査を警察から依頼された地球化学専門の大学教授・青江修介は、現場で奇妙な少女・羽原円華と出会う。彼女は、その場で起こる自然現象を次々と正確に言い当ててみせる。
その後、苫手温泉でも同様の事故が発生し、二人の被害者が知人同士であったことが判明する。青江は、これらの事故が単なる偶然ではなく、計画的な殺人ではないかと疑い始める。しかし、犯行現場の状況から、完全な無風状態になる瞬間を正確に予測し、そのタイミングで致死量の硫化水素が発生する場所に被害者を誘導するという犯行は、通常の人間には不可能であり、まさに「ラプラスの悪魔」でなければ実行できないと考えられた。
ガリレオシリーズでは科学的知見がミステリと組み合わさっていたが、ラプラスの魔女シリーズでは超能力が前提となったミステリとなっている。


②魔力の胎動

成績不振に苦しむスポーツ選手、息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。彼等の悩みを知る鍼灸師・工藤ナユタの前に、物理現象を予測する力を持つ不思議な娘・円華が現れる。挫けかけた人々は彼女の力と助言によって光を取り戻せるか?円華の献身に秘められた本当の目的と、切実な祈りとは。規格外の衝撃ミステリ『ラプラスの魔女』とつながる、あたたかな希望と共感の物語。

魔力の胎動』は、『ラプラスの魔女』の前日譚であり、羽原円華の高校生時代のエピソードを描く全5話の連作短編集である。
物語の中心となるのは、鍼灸師の工藤ナユタと、彼が出会う様々な悩みを抱えた人々である。成績不振に苦しむベテランのスキージャンパー、水難事故で息子が植物状態となり失意の底にいる父親、同性愛者であることへの社会的な偏見に苦しむピアニストなど、人生の岐路に立つ彼らの前に、物理現象を予測する不思議な力を持つ少女・羽原円華が現れる。
円華は、その驚異的な計算能力と洞察力を用いて、彼らが直面している問題の本質(例えば、スポーツ選手のフォームの僅かなズレや、事故状況における物理法則の作用など)を瞬時に見抜き、具体的なアドバイスや時には直接的な手助けによって、解決への道筋を示していく。各短編エピソードを通して、まだ謎多き存在である円華の能力の一端が示されると共に、彼女がなぜそのような行動を取るのか、その裏にある目的や人間性が少しずつ垣間見えてくる。

 


③魔女と過ごした七日間

AIによる監視システムが強化された日本。指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事が殺された。「あたしなりに推理する。その気があるなら、ついてきて」不思議な女性・円華に導かれ、父を亡くした少年の冒険が始まる。

魔女と過ごした七日間』は、『ラプラスの魔女』の出来事の後を描いたミステリ小説である。
物語の舞台は、AIによる監視システムが社会の隅々まで浸透し、強化された近未来の日本 。ある日、指名手配犯の顔を記憶し、雑踏の中から見つけ出す「見当たり捜査」のスペシャリストとして知られた元刑事・月沢克司が、多摩川の河川敷で死体となって発見される。
克司の一人息子で中学2年生の月沢陸真は、父の死に疑問を抱く。父の遺品を整理する中で、陸真は父に生前、永江多貴子という恋人がおり、さらに自分には母親の違う妹・照菜が存在するという秘密を知る 。照菜は話すことができないが、一度見たものを完全に記憶する特殊な能力を持っていた。
父の死の真相を突き止めたいと願う陸真の前に、再び羽原円華が現れる。円華は、照菜のような特殊能力を持つ子供たちの知能を研究する数理学研究所に関わっており、陸真の父の事件にも興味を示す。「あたしなりに推理する。その気があるなら、ついてきて」と円華に導かれ、陸真は友人の宮前純也と共に、危険を顧みず父親殺しの犯人捜しに乗り出す。
捜査を進めるうちに、事件の裏には、AIによる高度な監視システムをもってしても見抜けなかった巧妙なトリック、警察組織内部の保身や隠蔽工作、そして克司が生前に追っていた過去の未解決事件が複雑に絡み合っていることが明らかになっていく。

 

映像化もされている

2018年に三池崇史監督により映画化された。主なキャストは、青江修介役に櫻井翔、羽原円華役に広瀬すず、甘粕謙人役に福士蒼汰が起用された。

 

 

まとめ

東野圭吾「ラプラスの魔女」シリーズは、科学と超常現象がスリリングに交錯する独創的なミステリ小説だ。「ラプラスの魔女シリーズ」の刊行順①ラプラスの魔女、②魔力の胎動、③魔女と過ごした七日間である。

ぜひ第一作『ラプラスの魔女』から順に手に取り、予測不可能な能力を持つ「魔女」羽原円華と共に、壮大な謎解きの旅に出てみてはいかがだろうか。東野圭吾が切り拓いた新たなミステリの世界が、あなたを待っているはずだ。

 

 

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