日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

麻耶雄嵩の超問題作 / 『夏と冬の奏鳴曲』 麻耶 雄嵩

麻耶雄嵩の超問題作

首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!20年前に死んだはずの美少女、和音の影がすべてを支配する不思議な和音島。なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?メルカトル鮎の一言がすべてを解決する。

 

これは問題作の多い麻耶雄嵩の中で最大の奇書だ。作中を彩るキュビズムの衒学的な話といい、この小説の構成といい、トリックの馬鹿馬鹿しさといい、奇書に相応しい問題作。こんなにあっけに取られた密室トリックは今までになかった。未だに真相がよく分からない。解答編を明示的に描いていないあたり、アンチミステリだな。人には勧めづらいが、結構好き。

 

 

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)