最近、Netflixで話題になっているドラマが『イクサガミ』だ。混沌とした明治時代を舞台に、元・武士たちが繰り広げる「侍バトルロワイヤル」とも呼べる内容だ。
大金をかけた「蠱毒」というバトルロワイヤルに参加した士族たちの戦いを描いた作品である。
Netflixのランキングでも上位に入るくらいの人気作で、主演の岡田准一のアクションは非常に見応えがある。
謎のゲーム「蠱毒」を主宰している人物は誰か、その目的は何かというのがこの作品の一番の謎である。
この記事では「蠱毒」の主催者とその目的について書いた。ネタバレを含むので未読の人は注意してほしい。
蠱毒の黒幕は川路利良
『イクサガミ』における蠱毒の黒幕は、警視局トップである川路利良である。川路利良は大久保利通や前島密と同様に実在した人物で、日本の警察制度の父と呼ばれている。
Netflixのドラマだと第4話で黒幕が川路だと明かされている。
また川路を金銭的な面で支えていたのは財閥(三菱・住友・三井・安田)だ。財閥のトップは蠱毒を賭け事として楽しんでいる。
『イクサガミ』における川路利良は、蠱毒という過酷なデスゲームを仕掛けた張本人である。川路利良は、単なる権力者ではなく、国家の安定と近代化を推し進めるために陰謀を巡らせる策士として描かれている。まさか、川路利良が黒幕とは…
川路利良の目的は?
川路利良が蠱毒を仕掛けた目的を見てみよう。
川路の目的は、単なるデスゲームの開催ではなく、武士階級の完全な排除と日本の近代化の推進だ。川路は、武士を「旧時代の亡霊」と見なし、士族を排除することで新しい時代の秩序を確立しようとしていた。
明治維新後、廃刀令や士族の特権剥奪により、多くの士族が不満を抱えていた。この不満が各地で反乱を引き起こし、新政府の安定を脅かしていた。有名な反乱を挙げると西南戦争などがある。新政府を脅かす士族を処分するために川路は士族同士で殺し合う蠱毒を開催したと考えられる。
またもう一つの狙いは警察官の拳銃配備にある。士族の暴動をでっちあげることによって、警察に拳銃配備の口実を作ろうとしていた。その試みは失敗するわけだが…
イクサガミの時代背景
『イクサガミ』の舞台は明治11年(1878年)であり、これは旧幕府VS新政府の戊辰戦争から約10年後の時代である。この時代、日本は明治維新を経て急速な近代化を進めていたが、その裏では大きな社会的混乱が生じていた。
特に、廃刀令によって武士たちは刀を取り上げられ、特権を失い、貧困に苦しむ者が増加していた。特権階級的な待遇を失った士族の不満は高まっていて、各地で士族の反乱が起こっていたのである。特に明治10年(1877年)に起きた西南戦争は、士族反乱の最大規模のものであった。この戦争で政府軍が勝利したことで、武士の時代は完全に終焉を迎えたが、士族たちの不満は依然として残っていたのである。
実在した川路利良とはどんな人物?
ここではイクサガミではなく、実在した川路利良がどんな人物だったか書こうと思う。
川路利良は、幕末から明治にかけて活躍した日本の警察制度の父である。彼は1834年に薩摩藩に生まれ、若い頃からその才能を発揮した。特に、彼はフランス式の警察制度を日本に導入し、近代警察の基礎を築いたことで知られている。川路は初代大警視(現在の警視総監に相当)として、明治政府の中で重要な役割を果たした。
川路の生涯は、彼の出身地である薩摩藩の厳しい身分制度の中で始まった。彼は外城士という下層武士の家に生まれ、幼少期には身分の高い子供たちからいじめを受けることもあった。しかし、川路はその逆境を乗り越え、薩摩藩の藩主である島津斉彬に仕官することで運命を変える。斉彬の信任を受けた川路は、江戸に上り、さまざまな任務をこなす中でその能力を磨いていった。
明治維新の時には、川路は西郷隆盛や大久保利通と共に新政府の樹立に尽力した。彼は特に警察制度の整備に力を入れ、欧州視察を通じて得た知識を基に、日本の治安維持のための組織を構築した。川路の手腕により、警察は単なる治安維持の機関から、国家の重要な機関へと成長を遂げた。そして大警視まで上り詰めたのである。


