日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

ピタゴラスイッチ的殺人事件 / 『死亡フラグが立ちました!』 七尾 与史

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“死神”と呼ばれる暗殺者のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される――。特ダネを狙うライター・陣内は、ある組長の死が、実は“死神”によるものだと聞く。事故として処理された組長の死を調べるうちに、他殺の可能性に気づく陣内。凶器はなんと……バナナの皮!?

この戦争が終わったら故郷に帰って結婚するんだ」これは紛れも無い死亡フラグである。死亡フラグとは、漫画などで登場人物の死を予感させる伏線のことだ。登場人物がそれらの言動をとることを「死亡フラグが立つ」という。 例えば、『NARUTO』の飛段・角都戦前の猿飛アスマ死亡フラグがビンビンに立っていた。死亡フラグが立つというコミカルなタイトルのミステリ『死亡フラグが立ちました!』は、コミカルかつ今までに無いようなピタゴラスイッチ的殺人事件を扱ったエンタメ小説だ。第8回『このミステリーがすごい!』大賞隠し玉として出版された小説で、かなり枚数を削ったようだ。それもあってか、非常にテンポよく話が進んでいく、軽く楽しめるミステリになっている。

 

 

ピタゴラスイッチ的殺人事件

主人公は、特ダネを狙うライター・陣内。編集長の無茶振りで、「死神」と呼ばれる都市伝説的な殺し屋の正体を探ることになる。この「死神」という殺し屋、殺し方が非常にユニークだ。様々なトラップをターゲットの周りに張り巡らし、トラップを連鎖させることで偶然を装ってターゲットを殺害するのだ。そのトラップの連鎖具合は、まさにピタゴラスイッチ的。例を上げてみると、

ビデオにサブミナル効果を仕込んでおく→ターゲットはビールが飲みたくなる→冷蔵庫の前にバナナの皮を置いておく→ターゲットがバナナの皮で滑って転ぶ→いい感じのところにダンベルが置いてある→ターゲットが転んだ勢いでダンベルに頭をぶつける→死ぬ

といった感じだ。こんな感じでピタゴラスイッチみたいに連鎖的に発動するトラップがこれでもかと仕込まれている。果たして陣内は、ピタゴラスイッチ的トラップをかいくぐって、死神の正体を突き止めることができるのか?

 

 

小説版ファイナルディスティネーション

この『死亡フラグが立ちました!』のようにピタゴラスイッチ的なトラップを題材にした映画がある。それが『ファイナルディスティネーション』だ。なかなか人気のある小説で、この映画を皮切りにシリーズ化されている。この映画は『死亡フラグが立ちました!』の中でも登場するし、作者もこの映画から着想を得ているようだ。

あらすじはこんな感じだ。主人公のアレックスは予知夢のおかげで、何人かの同級生とともに悲惨な飛行機事故に巻き込まれずに済む。しかし、死神の魔の手は静かに忍び寄っていた...死神はピタゴラスイッチ的に偶然を連鎖させて、死を逃れた学生たちを死に追いやっていく。死神が仕掛けるピタゴラスイッチトラップは意外性のあるものも多く、中にはこんなのアリかよと思うものも。唯一無二のジャンルなので、ぜひ見て欲しい。

ファイナル・デスティネーション(2000) (字幕版)

ファイナル・デスティネーション(2000) (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 

 『死亡フラグが立ちました!』は人気シリーズになっており、これまでにも続編が多数出版されている。あなたもピタゴラスイッチ的トラップにはまってみるのはどうか?

死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫)

死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫)