日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

個人的に面白かった新書を10冊紹介してみる

今回は個人的に面白かった新書を10冊ほどピックアップして紹介したいと思う。

新書は幅広いジャンルの知識を養うのにとても役立つ。専門家と言うよりかは一般向けに書かれているものが多いので、初心者にも優しい。幅広く読んでみて自分の興味があるのもが見つかれば、新書の参考文献を辿っていけば知識が広がるだろう。

この記事では、ビジネスから外国語、人文、アート、文学など幅広いジャンルから知的好奇心をくすぐる本を紹介したいと思う。

 

 

 

『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』 / 岡田 斗司夫

最初に紹介する本は、オタキングこと岡田斗司夫の『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』といい新書だ。岡田斗司夫は大のSF好きなのもあってか、未来を見通す洞察力がズバ抜けているのだ。

この本が出版されたのは2018年。2018年から10年後の未来を予想したのがこの本だ。今は2022年なので、この本の答え合わせが少しできるわけだが、驚くべきことに予想が的中しているのだ。

例を挙げてみよう。アイドルや芸能人がYouTubeにどんどん進出すると言うのが予見されている。確かに2018年ぐらいでは芸能人がYouTubeに参戦していくような雰囲気ではなかった。だが、今となっては芸能人も積極的にYouTubeチャンネルを持つようになっている。

これぐらいなら誰でも予想できるのではと思うかもしれないが、これはまだ序の口だ。この本では、「ニュースが真実がどうか判断する」ことが重要ではないと言うことも語られている。この言葉は、科学的に考えるとおかしい反ワクチン派が一部の人には受け入れられていたことを予見していたようでもある。そのほかにもSNS映えのような「盛り文化」が主流になることも予見している。

ぜひこの先の未来を予見したい方は読んでみてほしい。また、ユーチューバーが消滅する未来とは何を意味するのか気になる人も読んでみてほしい。

 

 

『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』 / 白井 恭弘

大学まで英語を真面目に勉強してきたが未だに英語を喋ることができないのは非効率な教育方法が悪い」と思っている人はぜひこの本を読んでみてほしい。僕が外国語を習得するのに効率的な方法がないか探していたところであったのがこの本だ。

言語学の研究分野の1つに第二言語習得論というものがある。人が第二言語を習得するメカニズムを研究している分野だ。そんな研究があるのなら英語学習に反映すれば効率良く英語を学べるじゃんと思って読んだ本だ。効率的な学習法に弱い私である。

結論から言うと、この本が提示する第二言語学習メカニズムはとても役立つ。ていうか、研究結果が出ているのに中学・高校の教育は研究内容を反映していないのだろうと思った。それほど、今まで効率的と思っていた学習法と違っていたのだ。

この本で紹介されているのはインプット仮説やアウトプット仮説と言う学説だ。詳しい内容を知りたい人はぜひ読んでみて。効率的な学習方法が見つかるはずだ。

 

 

『現代ロシアの軍事戦略』 / 小泉 悠

丸の内OLとしてTwitterで一時期有名だった小泉悠が現代のロシアの軍事戦略を解説した本だ。丸の内OL?となった人はググってみてください。

ロシアのウクライナ侵攻が始まる前に書かれていた本で、「ハイブリット戦争」と言われる正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦を組み合わせたロシアの戦略が詳細に説明されている。ロシアがどのようにしてこの戦略に辿り着いたのか、クリミア侵攻時にこの戦略がなぜうまくいったのかについて説明されている。

ロシア視点から見てNATO側の国がどのような脅威に見えていたが詳細に書かれている点も興味深い。西側サイドなので、ロシアの視点からどう見えているのかわからないことが多い。NATOの東欧拡大やウクライナで相次いで起こった革命はロシアにとってみれば大きな脅威に見えていたと言うのは目から鱗だった。

 

 

『ビジネス戦略から読む美術史』 / 西岡 文彦

『ビジネス戦略から読む美術史』は、印象派といった美術作品をビジネスという観点から分析してみると言う異色の本だ。当時は人気がなかった印象派の作品をどのようにマーケティングしたのかなど、マーケティングの観点から読み解いている。アート付きだけではなく、ビジネスマンにも新たな気づきを与えてくれそうな一冊だ。

 

 

『戦略がすべて』 / 瀧本 哲史

戦略ついでに『戦略がすべて』を紹介したい。タイトルにあるように、世の中の事象を戦略という観点から分析した本だ。例えば、AKB48の多人数アイドルのシステムをビジネスの観点から分析してみせる。これを読めば戦略の感度が上がること間違いなし。

 

 

『損する結婚 儲かる結婚』 / 藤沢 数希

恋愛工学で有名な藤沢数希が結婚を金融商品の視点で分析した本だ。藤沢数希は、恋愛に金融工学や心理学の知見を応用した「恋愛工学」の提唱者で知られる。この恋愛工学というのが、女性蔑視的だとしてよく批判を受けているのだが、その話はここでは置いておこう。

1つ質問だが、離婚する際の費用としてあなたが思い浮かべるものはなんだろうか?この質問の答えとして慰謝料としか思い付かなかった人はこの本を今すぐ読んだほうがいい。

離婚が成立するまで所得が高い方が低い方の配偶者に婚姻費用というものを払わないといけないのだ。この金額がなかなか恐ろしい。また、離婚した時の財産分与について知りたいという方にもこの本はおすすめだ。

 

 

『フランス現代思想史 構造主義からデリダ以後へ』 / 岡本 裕一朗

レヴィ=ストロースやロラン・バルト、ラカンといった構造主義思想の入門書だ。その射程は、構造主義だけではなくポスト構造主義まで及ぶ。レヴィ=ストロースやデリダまで幅広く現代思想を学びたい人におすすめだ。

 

 

『小説の読み書き』 / 佐藤 正午

『小説の読み書き』は、『月の満ち欠け』で直木賞を受賞した佐藤正午が、日本近代文学を作家視点で読み解いた本だ。知る人ぞ知る小説巧者の佐藤正午が、小説家の書き方を考察するという斬新な内容である。こんな細かいところにこだわるのかと思うところや、さすが小説家だと唸らされる部分などあり、小説の理解を深める上でオススメの一冊だ。

 

 

『日本の同時代小説』 / 斎藤 美奈子

戦後以降の日本文学を現代まで時代ごとに追っていく本だ。戦後からの文学史の概観を知りたいという人におすすめだ。

 

 

『大学受験のための小説講義』 

この本は小説を読むのが好きな人だけではなくて、小説を読解するのが得意でない人にもオススメの本だ。小説を読むということがどういうことか理解することができる名著だ。著者はテクスト論で新たな視点からの文学作品の読み方に定評がある石原千秋さん。文芸時評でも有名だ。テクスト論というのは、作品から著者を切り離して解釈するという方法論のことだ。

タイトルに「大学受験」とあるように、大学入試の国語の問題を題材に小説の読み方をレクチャーする形で書かれている。題材になっている文章はセンター試験に出題された津島佑子「水辺」や山田詠美の「眠れる分度器」や、二次試験から横光利一「春は馬車に乗って」など。筆者に関する情報を考慮せずに小説の本文に着目して読解を行う「テクスト論」を丁寧に教えてくれる。大学入試と書いてあるが、もはや大学の文学部レベルの内容だ。ここまで小説を読解することができたら、大学入試なんて余裕だろう。

また、大学入試の国語に隠されたルールも説明してくれる。確かに大学入試の問題ではこういう読み方をしないといけないよなと納得した。そのルールが何かというのは本書を読んで確かめて欲しい。