日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

あなたもきっと騙される?どんでん返しが凄いミステリを10冊紹介してみた

 ミステリの醍醐味の1つといえば、どんでん返しがあるんじゃないだろうか。今まで見ていた世界が文字通りひっくり返る感覚は面白いものだ。

「どんでん返し」で有名な名作は数多くある。その中から厳選して、オススメのどんでん返しミステリを10冊紹介したいと思う。

 

 

 

 

『十角館の殺人』 / 綾辻 行人

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!

どんでん返しのミステリを勧めるなら真っ先にオススメしているのが綾辻行人の『十角館の殺人』。これでびっくりしない人がいるのかと思うぐらいに、どんでん返しが凄すぎる小説だ。孤島に立つ「十角館」という十角形の奇妙な建物が舞台で、連続殺人が起こる。

孤島のクローズドサークルの設定は、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』のオマージュで、わくわくポイントが高い。とにかく犯人が明らかになる「一行の衝撃」が凄い。本当に一行で世界がひっくり返ってしまう。本書を読んで世界がひっくり返る感覚を楽しんでみてほしい。

 

 

 『イニシエーション・ラブ』 / 乾 くるみ

話題沸騰の二度読みミステリー! 僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。バブルにわく1980年代後半の世相や流行を背景に、甘美でときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説——―と思いきや、最後から2行目(絶対に先に読まないで! )で、本書は全く違った物語に変貌する。 

どんでん返しの傑作を上げると『十角館の殺人』と同じくらい名前が挙がるのが乾くるみの『イニシエーション・ラブ』だ。

この小説の面白いところは、最後から二行目までは普通の恋愛小説だけど最後から二行目で全く違う話になるところだ。本当に世界がひっくり返ってしまう。

読み終わると、もう一回読み直して作中に散りばめられた伏線を確かめたくなる。最後の展開については男子と女子で感想が分かれそう...。

そして、著者の乾くるみが、女ではなく男というのが一番のどんでん返し

 

 

『ホワイトラビット』 / 伊坂 幸太郎

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!

伊坂幸太郎は巧みな構成と鮮やかな伏線回収が魅力的な作家だ。伊坂幸太郎のどんでん返しミステリといえば『ラッシュライフ』や『アヒルと鴨のコインロッカー』が有名だが、今回紹介する『ホワイトラビット』はそれを上回るほどのどんでん返し小説だ。

舞台は仙台の高級住宅地。閑静な住宅街で人質事件が発生する。人質事件に、オリオン座の神秘を語る男と次々と予想のつかない展開に翻弄される。そして気づいた時には伊坂マジックの術中にまんまとはまっているのだ。個人的に、伊坂作品の中でも一番驚いたのが『ホワイトラビット』だった。

 

 

 『ロートレック荘事件』 / 筒井 康隆

夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か?アリバイを持たぬ者は?動機は?推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。

SF、実験小説、純文学など様々な分野で傑作を残している小説家・筒井康隆だが、ミステリでもどんでん返しの名作を描いている。その名は『ロートレック荘事件』。

ロートレックいう画家の作品に彩られた別荘で起こる殺人事件を描いたミステリだ。筒井康隆ぐらいの高い筆力がないと成り立たない素晴らしいトリックで、まんまと騙された。さすが筒井康隆。種明かしのシーンでは得意げな顔をしている筒井康隆の顔が思い浮かぶ。

 

 

『七回死んだ男』 / 西澤 保彦

高校生の久太郎は、同じ1日が繰り返し訪れる「反復落とし穴」に嵌まる特異体質を持つ。資産家の祖父は新年会で後継者を決めると言い出し、親族が揉めに揉める中、何者かに殺害されてしまう。祖父を救うため久太郎はあらゆる手を尽くすが――鮮やかな結末で読書界を驚愕させたSF本格ミステリの金字塔!

『恋はデジャブ』という恋愛映画をご存知だろうか?同じ日を繰り返してしまい、抜け出せなくなってしまった男の成長と恋を描いた映画だ。この映画に着想を得て書かれたのが、西澤保彦の『七回死んだ男』だ。

主人公・久太郎は、『恋はデジャブ』と同じように、同じ一日が繰り返してしまうという特異体質を持っている。ある時、資産家の祖父が何者に殺されてしまい、久太郎は祖父を救おうとするのだが、何回も失敗してしまう。果たして祖父を救うことはできるのか?そして予想もしない驚きが読者を襲う。

 

 

『螢』 / 摩耶 雄嵩

オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。

日本のミステリ作家の中で、一番クセがすごいと思うのが摩耶雄嵩だ。『翼ある闇』や『神様ゲーム』といった賛否両論を巻き起こすミステリで知られている。今回紹介するのは一捻り効いたどんでん返しが待ち受ける『』だ。

オカルトスポット探検サークルのメンバーはファイアフライ館を訪れ、連続殺人事件に巻き込まれる。メンバーが命を落としていく中、待ち受ける結末はいかに…

この小説にはクセがすごい仕掛けが施されている。見破れる人は全くいないと思う。ちょっと普通のどんでん返しに飽きたなっていう人は是非読んでみてほしい。

 

 

『黒い仏』 / 殊能 将之

9世紀の天台僧・円載にまつわる唐の秘宝探しと、1つの指紋も残されていない部屋で発見された身元不明死体。無関係に見える2つの事柄の接点とは? 日本シリーズに沸く福岡、その裏で跋扈する2つの力。複雑怪奇な事件の解を、名探偵・石動戯作(いするぎぎさく)は、導き出せるのか? 賛否両論、前代未聞、超絶技巧の問題作。

ミステリ好きの方なら、殊能将之の名前を上げているにもかかわらず『ハサミ男』をチョイスしていないのはどういうことだと思っていることだろう。殊能将之が分からない人に説明しておくと、殊能将之には『ハサミ男』という定番すぎるどんでん返しミステリがあるのだ。

だが『黒い仏』のことを侮ってはいけない。『ハサミ男』とは別ベクトルにどんでん返される小説だ。別ベクトルすぎて怒ってしまう人もいるかもしれない。殊能将之の中でも最大の問題作だ。あまりの超絶展開故に、壁に投げつけてしまいたくなる人もいるかもしれない。ミステリでやってはいけないことをやっちゃってる感がすごいのだ。是非読んで確かめてみて欲しい。

 

 

 『ある閉ざされた雪の山荘で』 / 東野 圭吾

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

ある閉ざされた雪の山荘で』は東野圭吾のどんでん返しミステリとして評判が高い作品だ。仮想の雪の山荘でのクローズドサークルという異色の設定が使われたミステリー。実際に殺人が起きているのか、それとも芝居なのか分からないという、斬新なクローズドサークルになっている。余談だけど同じトリックがフランスの前衛文学にも使われていたりする。

 

 

 『向日葵の咲かない夏』 / 道尾 秀介

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

どんでん返しミステリといえば道尾秀介も外せない。『向日葵の咲かない夏』は、タイトルから爽やかな青春小説を想起する人がいるかもしれないが全く違う。 むしろ、憂鬱展開が待ち受ける鬱小説だ。なので、気分がすぐれない時には読まない方がいい。

ストーリーは、自殺したS君が姿を変えて「僕」の前に現れるところから始まる。S君は「僕は殺されたんだ」と訴える。「僕」は妹のミカと、S君を殺した真犯人を探し始める。どんでん返しが素晴らしく、まさしく世界がひっくり返る感覚が味わえる。ただ、ミステリ好きの間では賛否両論になりそうな内容でもある。

 

 

『『アリス・ミラー城』殺人事件』 / 北山 猛邦

鏡の向こうに足を踏み入れた途端、チェス盤のような空間に入り込む―『鏡の国のアリス』の世界を思わせる「アリス・ミラー城」。ここに集まった探偵たちが、チェスの駒のように次々と殺されていく。誰が、なぜ、どうやって?全てが信じられなくなる恐怖を超えられるのは…。古典名作に挑むミステリ。

北山邦彦の『『アリス・ミラー城』殺人事件』は、『鏡の国のアリス』と『そして誰もいなくなった』にオマージュが捧げられたどんでん返しミステリだ。チェスの進行に沿って、探偵たちが命を落としていく。最後に生き残るのは誰か?

 

 

『○○○○○○○○殺人事件』 / 早坂 吝

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』は、世にも珍しいタイトル当てのミステリだ。本格ミステリのギミックが大量に詰め込まれているが、メフィスト賞受賞作ということもあり、かなりクセが強い。どちらかというと壁本の部類に入るミステリだ。

ネタバレになるからあまり言えないが、メインの仕掛けは本当に賛否両論だ。初めて読んだときはこんなのありかよと 思った。どんでん返しレベルが高いことは保証できるが、壁に叩きつけないかは保証できかねます。おすすめしにくい理由は、この『○○○○○○○○殺人事件』の種明かしを読めばわかる。

 

 

 

以上どんでん返しがすごい小説10選の紹介でした。

 

 

 

みなさんお気づきでしょうか?

この記事に仕掛けがあることを。

 

 

実は、

 

 

10選といいつつ、11選でした。数えてみてください。

 

 

これぞ叙述トリックですね。え、違いますか。

 

 

 

 

plutocharon.hatenablog.com