日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

村上春樹の『騎士団長殺し』が遂に文庫化!

村上春樹のベストアルバム『騎士団長殺し』が文庫化

 

村上春樹の最新長編『騎士団長殺し』が文庫化する。まず、2019年の3月に第1部の顕れるイデア編の上下巻が発売され、続いて4月に第2部の遷ろうメタファー編の上下巻が発売される。Amazonとか見てる感じだと、2月末には第1部を買えそう。単行本が出たのが2017年だから、文庫化するのがかなり早い。単行本を買って読んだけれど、村上春樹の文庫本をほとんど集めているからまた買ってしまいそう。いや、買うだろうな。やれやれ。

 

 

 

 この『騎士団長殺し』は村上春樹のベストアルバム的な内容になっている小説で、今までの作品に使われていたモチーフが総結集している。妻の失踪、異世界への入口、謎の美少女、と盛りだくさんだ。また村上春樹が愛読する『グレート・ギャツビー』のモチーフも使われている。久しぶりに一人称(私)が使われていて、雰囲気は最近の『海辺のカフカ』『1Q84』ではなく『ねじまき鳥クロニクル』や初期三部作に近い。僕は初期の方の作品が好きなので、最近の村上春樹作品の中では結構楽しめた。謎解き要素もあるけれど、『1Q84』ほど結末が投げっぱなしという訳ではない。第三部も出るのかなと思っていたけれど、なくてもある程度の幕引きはなされている。『騎士団長殺し』は、「とっつきやすい」という点で村上春樹初心者向けなのかもしれない。けれど、『騎士団長殺し』は村上春樹の総集編の意味合いが強いので、これまでの小説(特に『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』、『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』、初期三部作と『ダンス・ダンス・ダンス』)と村上春樹が翻訳した小説(『グレート・ギャツビー』)を読んでいるともっと楽しめる。『騎士団長殺し』から読み始めてもいいし、他の作品を復習してから読んでもいい。つまりはそういうことだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 文学界のボジョレーヌーボーと言われるぐらいに、発売前は話題になる村上春樹作品だが、今回も文庫化で話題になるか!?『1Q84』の時ほどの過熱ぶりはなかったけれど、村上春樹作品はやっぱり話題になる。出版業界は書店の倒産など暗い話が多いけれど、村上春樹効果でまた活気を取り戻してほしいな。

 

 

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