日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

何回も観ないと理解できない難解映画まとめ

難解な映画はお好きですか?

映画の面白さといえば、派手なアクションシーンがある。マーベルやアメコミ系の映画はザ王道といった感じで、明確な面白さがある。でも、たまには頭を使わないと理解できない難解な映画を観るのはどうだろうか?難解映画でしか味わうことのできない、謎が解けたときの爽快感や考えに耽る楽しさがある。今回は難解すぎて一筋縄では理解できない映画をまとめてみた。

 

 

マルホランド・ドライブ

濃厚な闇に覆われた真夜中の山道を走る1台の車。やがてぼんやりとしたヘッドライトに浮かび上がる“マルホランド・ドライブ”の標識。それは一度知ると何度でも味わいたくなる、美しくも妖しいワンダーミステリーへの入り口だった…。

 難解な映画の代名詞としてよく名前があがるのがデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』だ。映画のプロットが複雑で、シュールなシーンも多いので一度観ただけでは理解不能。観ていると夢と現実の狭間を行ったり来たりしているような気分になる。プロットがどのようになっているかに気づけば、理解のとっかかりになるし、その仕掛けに驚くことだろう。不思議な魅力を持った中毒性のある映画だ。

 


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インセプション

インセプション(字幕版)

インセプション(字幕版)

  • レオナルド・ディカプリオ
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人が夢に入っている時に潜在意識の奥底にまで潜り込み、他人のアイデアを盗む出すという、犯罪分野においては最高技術を持つスペシャリストのコブ。しかし彼はその才能ゆえに、最愛のものを失う。そんなコブに、「インセプション」と呼ばれるミッションが課せられる。

自分は現実世界にいるのか、はたまた夢の中にいるのかというテーマは普遍的なテーマだ。思考実験的な話であり、胡蝶の夢という。クリストファー・ノーラン監督は『インセプション』で「胡蝶の夢」のモチーフに挑んだ。しかも、夢の中の夢ではなく、夢の中の夢の中の夢まで描いた。この時点でもう混乱する。

『インセプション』では夢の中で夢を見ることによって、深層心理に迫っていく。主人公が最終的にたどり着いたのは現実か、それとも夢の中か。ラストシーンが意味することとは?難解さを楽しむだけではなく、アクションシーンや斬新な演出も楽しめる。

 


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TENET テネット

TENET テネット(字幕版)

TENET テネット(字幕版)

  • ジョン・デイビッド・ワシントン
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「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」――主人公に課せられたミッションは、人類がずっと信じ続けてきた現在から未来に進む〈時間のルール〉から脱出すること。 時間に隠された衝撃の秘密を解き明かし、第三次世界大戦を止めるのだ。 ミッションのキーワードは〈TENET(テネット)〉。 突然、国家を揺るがす巨大な任務に巻き込まれた名もなき男(ジョン・デイビット・ワシントン)とその相棒(ロバート・パティンソン)は、任務を遂行する事が出来るのか!?

『インセプション』や『インターステラー』など難解なエンタメ映画を作り続けているクリストファー・ノーランだが、この『TENET』はクリストファー・ノーラン作品の中で最も難解だ。

クリストファー・ノーラン監督の映画の特徴といえば、時系列をバラバラにしたり、パラレルに描いたりと時系列が凝った構成になっていることだ。この特徴はデビュー作の『フォロウィング』や『メメント』でも現れているが、この『TENET』はその上をいく。時間を逆行するというモチーフが描かれており、その時系列逆行のルールを理解して映画の構成を初見で見抜くのはかなり難しい。時間の逆行を描いたアクションシーンは他に類がなく、監督の頭の中はどうなっているんだと驚嘆すること間違いなし。

 


映画『TENET テネット』の舞台裏!メイキング映像

 

 


2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅 (字幕版)

アーサー・C・クラーク原作、スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の金字塔。謎の石版“モノリス”と知的生命体の接触を描く。

2001年宇宙の旅』は言わずと知れたスタンリー・キューブリック監督の代表作だ。昔の映画とは思えないほどの圧倒的な映像美は色褪せることがない。この『2001年宇宙の旅』は説明という説明が一切省かれているために難解映画になっている。さらに、人類の進化というテーマを扱っているために、哲学的で深淵なストーリーとなっており、理解が難しい。わりと単調なとこもあるので睡眠導入剤になってしまう。難しいけれども、観終わった時には、「本当に凄いもの」を観たという感動がある。

 


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ドニー・ダーコ

ドニー・ダーコ(字幕版)

ドニー・ダーコ(字幕版)

  • ジェイク・ギレンホール
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マサチューセッツ州ミドルセックス。ドニー・ダーコ17歳。飛行機のエンジンが家に落ちて以来、彼の前に銀色のウサギが現れる。ウサギが告げる[28:06:42:12]、転校生の美少女、ホーキング博士、地下室の扉…。彼をとりかこむ全てが「あのこと」を告げている。28日後の世界で彼を待っているのは一体何なのか?

難解な青春SFミステリー。なかなかに難易度が高い。謎が解けたとき、ドニーの悲しい選択が明らかとなる。

 

 

脳内ニューヨーク

脳内ニューヨーク [DVD]

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  • フィリップ・シーモア・ホフマン
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ケイデン・コタードはニューヨークに住む劇作家。平凡だった彼の日常は、ある日を境に変わっていく。 失敗続きで、人生に嫌気がさしていた彼の元に、マッカーサー・フェロー賞(別名“天才賞”)を受賞した知らせが届く。 大金と名誉を手に入れた彼は、人生をやり直そうとそのすべてを注ぎ込んだ、一世一代のプロジェクトを実行する。 

それは、自分の頭の中に思い描いた理想のニューヨークを本物のニューヨークの中にもう一つ作り、誰も見たことのない舞台を上演する事だった。 

脳内ニューヨーク』は、虚構が現実を侵食していくタイプのメタフィクション映画だ。監督は、『エターナル・サンシャイン』の脚本で知られる奇才チャーリー・カウフマン

本物のニューヨークの中に主人公が思い描くニューヨークを作っていくのだが、しだいに架空のニューヨークが現実を侵食していく…。劇中で演じる人物が本物の人物に影響を与え出したりして、事態は混沌となる。メタフィクション的な難解さがあって、この映画は本当に理解不能だった。

 

 

ダイアナの選択

ダイアナの選択 [DVD]

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  • ユマ・サーマン
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ユマ・サーマンとエヴァン・レイチェル・ウッドがトラウマを抱えるヒロインを演じたミステリー。17歳の時に銃乱射事件に巻き込まれ、犯人から生死を分かつ究極の選択を迫られたダイアナ。15年後、彼女は理想の人生を手に入れたかに見えたが…。

 この映画はラストシーンまでは難解ではない。17歳の時に銃乱射事件に巻き込まれ、トラウマを抱いたダイアナの人生が淡々と描かれる。一見すると、ダイアナは理想の生活を送っているように見えるが、事件の暗い影が差していた。普通に話が終わると思いきや、ラストで衝撃の事実が明かされると、『ダイアナの選択』は難解映画に早変わりする。最初は頭にたくさんの?が浮かび、意味が分からなかった。しかし、劇中の伏線を辿っていくと、ダイアナの選択の意味とその重さが理解できる。難解さを超えた先に感動が味わえる良作。あまり知名度がないけれど、是非見て欲しい。

 

 

ミスター・ノーバディ

2092年、世の中は、化学の力で細胞が永久再生される不死の世界となっていた。永久再生化をほどこしていない唯一の死ぬことのできる人間であるニモは、118歳の誕生日を目前にしていた。そんなとき、1人の新聞記者がやってきてニモに質問をする。「人間が“不死”となる前の世界は?」ニモは、少しずつ過去をさかのぼっていく――。

 人生誰しも、あの時こうしてれば...と思うことはあるはず。そんなif(人生のタラレバ)をテーマにした映画がミスター・ノーバディだ。この映画では、あらゆる人生の選択のうち全ての選択肢を選ぶという、途方もないことを描いている。

主人公のニモは様々に分岐した人生を語りだす。親が離婚した時母親についていったら、父親についていったら、三人の女性から誰を選ぶか…などなど。当然、人が生きられるのは一つの人生だけだ。普通の人には不可能である、すべての選択肢を選んだ複数形の人生が、幻想的な美しい描写で描かれる。一体ニモはどの人生を選んだのか?それとも、ニモはすべての選択肢を選んだのか?その答えは、実際に映画を観て確かめて欲しい。

 

 

裏切りのサーカス

裏切りのサーカス (字幕版)

裏切りのサーカス (字幕版)

  • ゲイリー・オールドマン
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東西冷戦下、英国情報局秘密情報部MI6とソ連国家保安委員会KGBは熾烈な情報戦を繰り広げていた。ある策略により、英国諜報部<サーカス>を去ることとなった老スパイ・スマイリーの元に、困難な任務が下される。それは、長年に渡り組織の幹部に潜り込んでいるソ連の二重スパイ<もぐら>を捜し出すこと。標的は組織幹部の4人。過去の記録を遡り、容疑者を洗いあげていくスマイリー。やがて彼が見いだす意外な裏切者の正体とは―。

裏切りのサーカス』は、冷戦下のスパイを描いた映画だ。スパイ映画ということで登場人物たちが裏の裏をかこうと駆け引きを繰り返す。二重スパイが登場するということで話がややこしい。いったい誰が「もぐら」なのか?一度観ただけでは、複雑すぎてよく分からないけれど、丁寧に観直すと凄さが分かる。


気狂いピエロ

気狂いピエロ

気狂いピエロ

  • アンナ・カリーナ
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金持の妻と結婚して退屈な毎日を送っていたフェルナンドは、再会した昔の愛人マリアンヌと一晩を過ごす。 翌朝、部屋には首に鋏を突き立てられた男の死体があった。「訳は後で話すから」と言うマリアンヌに手を取られてフェルナンドは彼女と逃避行を始める。

 映画を語る上で避けることが出来ないのが、フランス映画のムーブメントのヌーヴェルヴァーグ。そのヌーヴェルヴァーグを代表するのがゴダールだ。ゴダールの映画はとにかく難解で、とっつきにくい。ゴダール映画の難解さは、プロットの複雑さではなく、詩的なセリフと散りばめられた引用にあるように思う。

気狂いピエロ』はゴダール、そしてヌーヴェルヴァーグの代表作として名高いが、詩的すぎて理解するのが大変だ。いや、理解しようとするのが間違っているのかもしれない。考えるな、感じろ、的な。あらすじは男女の逃避行で分かりやすいほうだと思うけど、映像表現が独特だし、何かの引用をしてるみたいだけど引用元がよく分からないし、セリフが詩的すぎて理解不能。

ただ、センスはズバ抜けていて、アンナ・カリーナのファッションは素敵だし、全体的におしゃれな映画になっている。この映画を語れたら、映画好きとして一人前なんだろなと思う。

 


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ゴダールの決別

ゴダールの決別 (字幕版)

ゴダールの決別 (字幕版)

  • ジェラール・ドパルデュー
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「ある出来事」の調査にレマン湖のほとりの町にやってきたアブラハム・クリムトは、シモン・ドナデューとその妻ラシェルの居所を探し、人々に物語を買いに来たと述べる。その頃、ラシェルはモノ牧師に5日前、肉体のもろさを知ったと言い、寝た相手が夫か神か分からなかったと訴えるが…。

 この『ゴダールの決別』は、難解と言われるゴダール映画の中で、一番難解な映画かもしれない。『ゴダールの決別』は明確なストーリーがあるのかないのか分からず、ただ意味深なセリフや詩的なセリフが繰り返される。宗教的なことがテーマになっている気がするが、全くもって意味が分からない。作品内で矛盾があるようなないような。これを観て、ゴダール映画と「決別」しないことを祈るばかりである。ただ、映像は美しかったことをここに記しておく。

 

 

去年マリエンバートで

去年マリエンバートで(字幕版)

去年マリエンバートで(字幕版)

  • デルフィーヌ・セイリグ
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豪華城館でのパーティで男女が出会う。男は去年マリエンバートで会ったというが、女にその記憶はない。しかし、男に迫られるうちに女は過去と現在の境を見失い、その記憶も曖昧なものになっていく…。

 ヌーヴェル・ヴァーグ期の映画監督アラン・レネの作品。あらすじは、男が女に「去年マリエンバートで会った」というが、女にはその記憶がなく押し問答が続くというものだ。新手のナンパみたいな話だけれども、『去年マリエンバートで』が難解映画だといわれるのは、その時系列に理由がある。難解な小説で知られているアラン・ロブ=グリエが脚本を書いていることもあり、時系列が複雑になっている。現在と過去、そして回想が入り混じり、混沌としていく。現在と過去の境界線がだんだんと溶けていくのだ。映像がモノクロで美しい。

 

 

皆殺しの天使

皆殺しの天使 (字幕版)

皆殺しの天使 (字幕版)

  • シルヴィア・ピナル
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オペラ観劇後に晩餐会が催された邸宅で宴を楽しむ20人のブルジョア。夜が更け明け方になるも、誰も帰ろうとしない。皆が帰る方法を忘れ、何日間にもわたる幽閉状態が続き、人々の道徳や倫理が崩壊していく…。

 不条理に没入していくブニュエルの後期作品。この映画は設定がシュール(超現実的)過ぎて、理解するのが難しい。晩餐会に訪れたブルジョワが誰一人として帰ろうとしないのだ。まさにシュールレアリズム。帰ろうとしないブルジョワたちは何を意味するのだろうか?

 

 

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