日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

『ノルウェイの森』が好きな人におすすめの小説

『ノルウェイの森』みたいな小説が読みたい!

 

『ノルウェイの森』は村上春樹の代表作として有名な小説だ。タイトルはビートルズの名曲「ノルウェイの森」に由来していて、主人公ワタナベと直子、緑の恋愛模様を通じて生と死、喪失と再生を叙情的に描いている。性描写の多さから人を選ぶ小説だけれど、世界観に共感する人は深く心を揺り動かされると思う。

この小説は単行本と文庫本を合わせると1000万部以上売り上げている。恋愛の痛みや喪失感をここまで描き切った作品は『ノルウェイの森』ぐらいしかないんじゃないだろうか。

そんな響く人には響く村上春樹の『ノルウェイの森』だが、心に響いた人は『ノルウェイの森』のような感傷的な小説が読みたくなることがあると思う(実体験)。そこで『ノルウェイの森』のような、恋愛の喪失感を叙情的に描いた小説をちょっとまとめてみた!まずは村上春樹作品から『ノルウェイの森』に似た系統の作品を紹介!

 

 

『螢』

まずは村上春樹の短編集『螢・納屋を焼く・その他の短編』から「」という短編を紹介したい。

『蛍』は『ノルウェイの森』の原型となった短編小説で、『ノルウェイの森』の第2章、第3章にあたる。『ノルウェイの森』はこの『螢』を下敷きに膨らませた小説となっている。『蛍』にはワタナベや直子は登場せず、『僕』や『彼女』となっている。短編と長編の違いを楽しむのも良いかも。

 

 

『スプートニクの恋人』

次に紹介するのは、村上春樹の長編作品『スプートニクの恋人』。この『スプートニクの恋人』は『ノルウェイの森』の変奏といえる小説となっている。比喩が過剰に使われた文体で綴られているのが特徴だ。

スプートニクは旅の同伴者と同時に、孤独な衛星、分かり会えない孤独な人々を意味している。「ぼく」やすみれ、ミュウはそれぞれに喪失と孤独を抱え、向き合っている。『ノルウェイの森』と関連させて読むと解釈が深まるかも。

  

 

ここからは村上春樹ではなく別の作家の作品を紹介!村上春樹チルドレンと呼ばれる作家の小説が割と多め。

 

 

 『グレート・ギャツビー』

次に紹介するのは、『ノルウェイの森』にも登場した『グレート・ギャツビー』だ。『グレート・ギャツビー』はスコット・フィッツジェラルドの代表作で、アメリカ文学あるいは20世紀文学を代表する一冊と言われている。。永沢さんが愛読する本で、村上春樹自身も翻訳を行っている。

『グレート・ギャツビー』は簡単に要約すると、失われた恋を取り戻そうとした男の話だ。最後の文章が本当に美しいので、是非とも読んでほしい。いろんな人の翻訳が出ているが、個人的には村上春樹訳が一番好きだ。

 

 

『パイロット・フィッシュ』

『パイロットフィッシュ』村上春樹チルドレンと評される大崎善生の代表作だ。村上春樹以外の小説では1番おすすめ。『ノルウェイの森』が好きな人はきっとハマるはず。恋愛の喪失が叙情的に描かれた小説。『ノルウェイの森』と同様に生と死について描かれている。大崎善生は、恋愛の喪失感やその再生を、透明感溢れる文体で感傷的に描いているのが特徴だ。

 

 

『秒速5センチメートル』

『君の名は。』で注目を集めている新海誠が『秒速5センチメートル』を自らノベライズ。雑誌のインタビューでも村上春樹に影響を受けたと語っている新海誠監督。この『秒速5センチメートル』は新海誠が注目を集めるきっかけとなった作品で、新海誠版『ノルウェイの森』と言える作品だ。この小説版では映画では詳しく描かれなかった最終章が深く掘り下げて描かれている。

タイトルが意味するのは桜の花びらが落ちるスピードのことである。時間とともに移ろいゆく貴樹と明里の二人の心の距離を叙情的に描いている。貴樹は失われた過去の恋愛の呪縛から逃れることが出来ず、自己愛ゆえに周りの人を傷つけてしまう。この『秒速5センチメートル』では、過去の恋愛を引きずり、感傷に浸る自分に陶酔している姿を、叙情的な映像と村上春樹的なモノローグで極限まで美しく描いている。自己陶酔を受け入れてくれるから、この『秒速5センチメートル』は多くの人に愛されているのかなと思う。

ちなみに『秒速5センチメートル』は男子には凄くはまるみたいだけど、女子にはあまりうけが良くない(主人公うじうじしすぎとか)。男子には影響が大きく、『秒速5センチメートル』を観たり、読んだりしたあとにポエマー(詩人)になってしまった男子が多数報告されている。

 

 

 『言の葉の庭』

『秒速5センチメートル』に引き続いて、こちらも新海誠の映画のノベライズ。こちらも随所に村上春樹ぽさが漂っている。『ノルウェイの森』では印象的な雨のシーンが多いが、この『言の葉の庭』も雨が重要な要素となっている。

ちなみに『ノルウェイの森』の最初のタイトルは「雨の中の庭」というものだったらしい。これは偶然かな。

 

 

『真夜中の五分前』

こちらも村上春樹に影響を受けた作家・本多孝好の作品。村上春樹チルドレンの一人とよく言われている。読んでいると村上春樹の影響がひしひしと感じられる。文体や比喩、モチーフに至るまで村上春樹の影響が見られる。双子が出てくるあたりは、『1973年のピンボール』を彷彿とさせる。

恋人を失った主人公の喪失と再生をミステリー的な要素も絡めて描いた新感覚の小説だ。ミステリー的な『ノルウェイの森』と言えるかも。恋人を交通事故で失った「僕」は一卵双生児のかすみに出会う。この出会いがきっかけで「僕」は新しい一歩を踏み出すことになるのだが、運命は「僕」を奇妙な世界に運び込んで行く。最後には驚愕のエンディングが待ち受けている。真夜中の5分前というタイトルや5分が意味することがとてもお洒落。偶然かもしれないけど、新海誠の『秒速5センチメートル』といい、数字を効果的に使っていく点で共通している。

 

 

 『四月になれば彼女は』

『四月になれば彼女は』は、失われてしまった恋、冷めてしまった恋、人を愛するということは何かといった、愛に関する哲学をお洒落に描いた恋愛小説。言い回しの随所に村上春樹ぽさが感じられる(~たのは~の頃だったみたいな言い回しとか比喩の部分)。村上春樹に影響を受けたかどうかについての記事やインタビューがないので本当のところは分からないけど、読んだ感じから『四月になれば彼女は』は村上春樹の影響下にあると勝手に思っている。

 

 

『プールの底に眠る』

こちらはメフィスト賞を受賞した白河三兎のデビュー作。金沢21世紀美術館の「スイミング・プール」という作品(プールの底から上をのぞき込める体験型のアート)に着想を得て書かれたらしい。随所に村上春樹ぽさが感じられる。ミステリーだけに収まらない名作!

 

 

 『ラヴレター』

日本を代表する映画監督・岩井俊二の名作を本人が小説化。奇妙な文通から始まる、心揺さぶる恋物語。

 

 

『 上海ベイビー』

次は中国の作家。衛慧は村上春樹チルドレンの一人だと言われている。衛慧の代表作『上海ベイビー』は、大胆な性描写で話題になり、中国では発禁となったそう。

『上海ベイビー』には、構造的に『ノルウェイの森』と似通った部分がある。『ノルウェイの森』では、僕(ワタナベ)と直子、緑の人間関係や恋愛模様が描かれている。直子は死のメタファー、緑は生のメタファーとして読むことができる。この三角関係がベースとなって物語が進行していく。『上海ベイビー』では、ニコと天天、マークの三角関係が描かれている。ちょうど『ノルウェイの森』における主人公たちの関係の性別を逆にしたような感じだ。引用されている「女とセックスするのと、いっしょに眠るのとは、まったく相異なる感情である。前者は情欲であり、後者は愛情である。」というミランクンデラの言葉に象徴されるように、『上海ベイビー』が描くのは、情欲と愛情の間で揺れ動く女性の姿だ。

 

 

 存在の耐えられない軽さ

ミラン・クンデラによるチェコを舞台にした恋愛小説。 

 

 

 『ボクたちはみんな大人になれなかった』

それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在をSNSがつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。

『ノルウェイの森』のような恋愛の喪失と再生を描いた恋愛小説の系譜の中で、一番最近の小説が『ボクたちはみんな大人になれなかった』だと思う。SNSの時代のラブストーリーとあって、元カノにFacebookで友達申請したところから小説は始まる。とにかくエモい小説。 

 

 

以上、『ノルウェイの森』が好きな人におススメの小説のまとめでした。是非是非気になる作品は読んでみて!

 

 

 

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