日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

その驚きはプライスレス!隠れたどんでん返しの名作10選

定番ではないが名作のどんでん返し小説

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

 衝撃的な結末で読者を驚かせるどんでん返し小説。小説でしか味わえない体験があって、見事に騙されるとその快感がやみつきになる。どんでん返しの小説と言えば、『イニシエーション・ラブ』であったり、『十角館の殺人』、『ハサミ男』、『ロートレック荘事件』、『星降り山荘の殺人』と定番のものがいくつかある。今回はまだ定番になっていない、あるいはそんなに有名じゃないどんでん返し小説を紹介していこうと思う。

 

 

神のロジック、他人のマジック

神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)

神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)

 

 ここはどこ?何のために?世界中から集められ、謎の“学校”で奇妙な犯人当てクイズを課される〈ぼくら〉。やがてひとりの新入生が〈学校〉にひそむ“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲う―。驚愕の結末と周到な伏線とに、読後、感嘆の吐息を漏らさない者はいないだろう。

謎の学校を舞台にしたクローズドサークルもののミステリー。しかし、ただのクローズドサークルではない。衝撃の事実が明かされたとき、世界が揺らぐような体験を味わえる。本当にすべてがひっくり返されるのだ。著者は『七回死んだ男』で有名な西澤保彦。『七回死んだ男』もどんでん返しの名作として知られているが、この『神のロジック人間のマジック』も負けず劣らずの衝撃を与えてくれる。しかし、残念なことに絶版になっている。無念である。

 

 

黒い仏

黒い仏 探偵石動シリーズ (講談社文庫)

黒い仏 探偵石動シリーズ (講談社文庫)

 

9世紀の天台僧・円載にまつわる唐の秘宝探しと、1つの指紋も残されていない部屋で発見された身元不明死体。無関係に見える2つの事柄の接点とは? 日本シリーズに沸く福岡、その裏で跋扈する2つの力。複雑怪奇な事件の解を、名探偵・石動戯作(いするぎぎさく)は、導き出せるのか? 賛否両論、前代未聞、超絶技巧の問題作。 

ミステリには壁本というジャンルがある。壁本とは、あまりの超絶展開故に、壁に投げつけてしまいたくなる本の俗称である。この『黒い仏』は、その壁本の中でも最高峰かもしれない。ミステリでやってはいけないことをやっちゃってる感がすごい。ミステリに対するパロディとなっている『黒い仏』は読む人を選ぶ作品だが、その衝撃度は保証する。無論、壁に投げつけるかどうかはあなた次第だ。著者の殊能将之は『ハサミ男』で有名なミステリ作家である。この『黒い仏』も、ある意味では『ハサミ男』にまさる衝撃がある。残念ながら、『黒い仏』は絶版である。無念。

 

 

クリスマス・テロル

クリスマス・テロル<invisible×inventor> (講談社文庫)

クリスマス・テロル<invisible×inventor> (講談社文庫)

 

女子中学生・小林冬子。苫小牧から船に乗り、行き着いた先は見知らぬ孤島。いったいここは――後頭部を殴られ小屋に寝かされた冬子は、監視の役目を依頼される。「見る」者と「見られる」者の関係が逆転するとき、事態は一変する。話題をさらった佐藤友哉の問題作ついに文庫化。

この『クリスマス・テロル』も立派な壁本である。ミステリというよりかは、小説でやってはいけないことをやってる感が凄い。メインとなるの密室トリックも賛否両論ありそうだが、一番問題なのは最終章だ。色んな意味で、あらゆるものをどんでん返すのである。著者はメフィスト賞出身で、現在は純文学畑でも活躍している佐藤友哉。この佐藤友哉のことをよく知っていると、『クリスマス・テロル』がより楽しめる。佐藤友哉の作家生命をかけた渾身の作品を是非味わって欲しい。無論、壁に叩きつけるかどうかはあなた次第だ。うすうすお気づきかもしれないが、こちらの本も絶版なのである。なむなむ。

 

 

 消失!

消失! (講談社文庫)

消失! (講談社文庫)

 

見事な赤毛と死体の消失。これが連続殺害事件の共通項だった…。二十五歳で、研究論文『都市と探偵』のベストセラーを持つ気鋭の私立探偵、新寺仁。彼が著書の中で詳しく分析した福×県高塔市に事務所を開くと間もなく、この不思議な事件が発生した。猟奇的な色あいを帯びるこの事件、真相は意外にも。

卓越したアイデアが冴えわたっているのが『消失!』。詳しく書くとネタバレになるので、ただただ読んでとしか言えない。昔は入手困難であったが、今ではちゃんと入手できるので安心を。

 

 

名も無き世界のエンドロール

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)

 

ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは、「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した―。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?大いなる「企み」を秘めた第25回小説すばる新人賞受賞作。  

まず初めに言っておこう。安心してください、この本は絶版ではありません。伊坂幸太郎に通じるような伏線回収が魅力。心を揺さぶるどんでん返し小説となっている。

 

 

弁護側の証人

弁護側の証人 (集英社文庫)

弁護側の証人 (集英社文庫)

 

ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか?弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を賭けた法廷での闘いが始まる。「弁護側の証人」とは果たして何者なのか?

 タイトルからしてアガサ・クリスティーの『検察側の証人』を意識している。内容も『検察側の証人』に引けを取らないような小説になっている。大胆なトリックは一読の価値あり。

 

 

○○○○○○○○殺人事件

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

 

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で毎年オフ会を行っていた。沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が!さらには意図不明の密室が連続し…。果たして犯人は?そしてこの作品のタイトルとは?

世にも珍しいタイトル当てのミステリ。これでもかと本格ミステリのギミックを詰め込んでいるが、メフィスト賞受賞作ということもあり、かなり癖が強い。どちらかというと壁本の部類に入るミステリだ。ネタバレになるからあまり言えないが、メインの仕掛けは本当に賛否両論だ。初めて読んだときはこんなのありかよと 思った。どんでん返しレベルが高いことは保証できるが、壁に叩きつけないかは保証できかねます。著者の早坂吝は異色のミステリを書き続けていて、個人的には注目しているが、他人には勧めずらい。おすすめしにくい理由は、この『○○○○○○○○殺人事件』を読めば分かる。

 

 

 ある閉ざされた雪の山荘で

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

 

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

東野圭吾のどんでん返しの名作と言えば、『容疑者xの献身』が挙げられることが多い。しかし、 『ある閉ざされた雪の山荘で』も隠れたどんでん返しの名作だ。東野圭吾はクローズドサークルが生じる状況設定にこだわり、仮想の雪の山荘でのクローズドサークルという異色の設定を用いている。実際に殺人が起きているのか、それとも芝居なのか分からないという、斬新なクローズドサークルだ。東野圭吾作品の中では地味で知名度がないかもしれないがすごくおすすめだ。東野圭吾の『仮面山荘殺人事件』も隠れたどんでん返しの名作としておすすめだ。

 

 

この闇と光

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

 

森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた…はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実で―。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張りめぐらされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!

ツタヤなどで最近プッシュされていることが多い『この闇と光』。 まず、ゴシック・メルヘン調の世界観が素晴らしい。しかも、その世界観がどんでん返しで崩れていってしまうのだ。

 

 

 セカンド・ラブ

セカンド・ラブ (文春文庫)

セカンド・ラブ (文春文庫)

 

里谷正明は会社の先輩から誘われたスキー旅行で、内田春香と知り合う。交際を始めた2人は2月のある日、身形(みなり)のいい紳士に強引に呼び止められる。紳士は春香を新宿のパブで働く「美奈子」だと断じた。後日、店を訪れた正明は、春香にそっくりな女、美奈子と出会い驚愕する。はたして、美奈子の正体は春香なのか? ベストセラー『イニシエーション・ラブ』に続く「驚愕の恋愛ミステリー」第2弾!

どんでん返しの定番となった『イニシエーション・ラブ』の著者・乾くるみによる恋愛ミステリー。『イニシエーション・ラブ』のような一気にひっくり返すどんでん返しではなくて、じわじわひっくり返してくる感じの小説。女って怖い。ちなみに、乾くるみが男性作家というのが最大の叙述トリック。

 

 

異人たちの館

異人たちの館 (文春文庫)

異人たちの館 (文春文庫)

 

富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。
売れない作家・島崎に舞いこんだゴーストライターの仕事。女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。この一家には、まだまだ秘密がありそうだ――。五つの文体で書き分けられた著者の初期最高傑作が甦る!  

叙述トリックの名手・折原一の隠れた名作が『異人たちの館』。2018年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選ばれているので、世間的にも隠れた名作のようだ。多重文体、B級事件、叙述トリック、サスペンスが絡み合い、一つの名作になっている。折原一の大作『異人たちの館』ぜひ一読あれ!

 

 

 

 

隠れたというよりかは、絶版で物理的に読めない本や、壁に叩きつけたくなる壁本が多くなってしまった。絶版の本は古本屋で探せばどうにかなると思われる。というわけで、隠れたどんでん返しの名作10選、ぜひ読んでみて。

 

 

 

 

みなさんお気づきであろうか?この記事には仕掛けがあることを。

 

 

実は

 

 

10選といいつつ、11選でした。数えてみてください。

 

 

 

これぞ叙述トリックですね。え、違いますか。

 

 

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