日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

さよなら、スタンダードブックストア。

 ありがとう、スタンダードブックストア

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僕が大学生時代にお世話になった本屋はいくつかあるけれど、そのなかでも印象深いのが心斎橋のスタンダードブックストアだ。大学生になってその存在を初めて知って、足しげく通うようになった。『本屋ですが、ベストセラーはおいていません。』のキャッチコピーが示すように、普通の本屋では売ってそうな本が見当たらなくて、代わりに見たことがないけれど興味を惹かれる本が棚に並んでいた。海外文学の棚は凄くマニアックで、通い始めたころはほとんど知らない本だらけだったように思う。スタンダードブックの海外文学の棚がきっかけで、海外文学の棚に詳しくなった。カフェも併設していて、コーヒーを飲みながら買ってない本を読めるというのも新鮮だった。知の迷宮のようなこの本屋に、僕はすっかり夢中になっていた。一階の入口の近くのファッション雑誌ゾーンは普通の本屋と違ってモード系の雑誌が展開されていて、そこも好きな理由の一つだ。なんばでバイトしていたこともあり、バイト後の夜遅くでもスタンダードブックストアに行っていた。そこで過ごす時間はまさに至福のひとときだった。これからもこの本屋に通い続けることができると、何の疑いもなく思っていた。

 

一階フロアが古着屋になったときには、うすうす何かを感じていたような気がする。充実していた海外文学の棚が小さくなってしまったことが何よりもショックだった。それから、大阪の本屋がどんどんなくなっていった。スタンダードブックストアを知るきっかけになった梅田のスタンダードブックストアが閉店して、心斎橋のアセンスも閉店した。大阪の個性的な本屋がどんどんなくなっていくのが本当に寂しかった。そして、記憶に新しい天牛堺書店の閉店。このニュースには本当に驚かされた。

 

天王寺のスタンダードブックストアに行ってみると、以前の雰囲気と違っていて、もうすぐなくなってしまうように感じた。昔の個性的な本のセレクトが薄れているように感じたからだ。心斎橋のスタンダードブックストアだけは大丈夫だよなと、心斎橋のスタンダードブックストアがなくならないことだけは無条件に信じていた。

 

けれど別れの日は思ったより早くやってきた。

 

驚きもあったけれど、やっぱりかと思っている自分もいた。本をより深く知った本屋であっただけに、喪失感が大きい。

天王寺のスタンダードブックストアはなくならずに、リーディングスタイルに変わるみたいだ。

 

ただ、また新しいスタンダードブックストアを作るかもしれないらしい。クラウドファンディングをする予定らしいので、その時は全力で協力したい。僕が一番お世話になった本屋だからだ。またあの個性的な本棚に再会できたらな、と思う。

 

ありがとう、スタンダードブックストア。また逢う日まで