日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

ストリートからモードへの転換期 BALENCIAGA 2019ssを読み解いてみた

ストリートからモードへの方向転換をみせたバレンシア


BALENCIAGA SUMMER 19

 会場全体に映像作品を流し、近未来的な演出をみせた2019ssのバレンシアガ。今回のショーは、ストリートの次のトレンド、ファッションの近未来を示唆する内容だった。ストリートブームを牽引してきたバレンシアガは、ファッションの近未来を見据えていた。ファッションの近未来とは、モードのリバイバル。2018awぐらいから徐々にシフトしていた感じはあったが、この2019ssでトレンドを一気に変えにきた印象を受けた。今回のバレンシアガは以前ほどヴェトモン色が強くなく、どちらかというとバレンシアガの伝統に基づいたデザインになっていた。

 

 モードを前面に押し出した2019ss

もうそろそろストリートブームが頭打ちになることを見越してか、デムナ・ヴァザリア率いるバレンシアガは、セットアップやクチュールを前面に押し出したショーを展開した。モードのリバイバルを感じさせるような内容だった。2018awのバレンシアガはこれまでのストリートスタイルにバレンシアガの伝統を組み合わせたようなコレクションだった。それまでのバレンシアガはヴェトモンと同じようなスタイルだったけれど、2018awは、デムナ・ヴァザリアにとっての「バレンシアガ像」が確立されているように感じた。さらに、今回の2019ssでは大幅にモード寄りにシフトしている。2018awのような多重レイヤードはなく、シンプルなルックが多い印象を受けた。デムナの十八番ともいえるビックシルエットのシャツも登場したが、以前ほどヴェトモン色は強くなかった。肩が角ばっているジャケットなど、新しいシルエットのセットアップが多く登場し、クチュールを現代的に解釈したドレスなど、バレンシアガの歴史に紐づいたコレクションが展開された。個人的には、ジャケットの肩にラベルがついているのが凄く面白いなと思った。

 

 

 

ダッドスニーカーの時代は終わり!?

2019ssのバレンシアガで一番意外だったことは、スニーカーが一つも発表されなかったことだ。ルックのほとんどが革靴だった。デザイナーがデムナに変わってから、バレンシアガはスピードトレーナーやトリプルSなどのスニーカーを流行らせてきた。とくにトリプルSは人気が高く、この靴からダッドスニーカーのブームが始まったと言っても過言ではない。2018awでもバレンシアガはtrackという靴を発表している。(ちなみに、trackの見た目は、ものすごく瞬足に似ている。)バレンシアガの影響もあってか、ルイヴィトンはアークライトという靴を発表しているし、グッチもダッドスニーカーを発表している。2018awではスニーカーを使ったルックは少なかったが、まさか今回一つもスニーカーを発表しないとは思っていなかった。ダッドスニーカーの時代は終わりだなとしみじみと感じた。ダッドスニーカーって、トレンドという色眼鏡を外してみれば、ただのダサい靴にしか見えない(本音)。熱狂があったから、履いていてもカッコいいという風潮があったけれど、トレンドが過ぎると。プレ値もさがるだろうな。トレンドに関係なく、ダッドスニーカーのデザインを気に入って買った人ならいいと思う。トレンドが過ぎても自分が着たいものを着たらいいと思う。僕自身、カラーのトリプルSはそんなに好きじゃないけれど、黒一色のトリプルSは凄く好きだ。細いスキニーとかとあわせてみたい。ただ、「流行り」だから、ここ最近ダッドスニーカーを買ったひとは悲惨だなと思う。別にダッドスニーカーを否定している訳ではなくて、トレンドに関係なくダッドスニーカーが好きな人は、自分のファッションを貫いてほしい。むしろ、トレンドに流されずに自分を貫く姿勢は凄くカッコいいと思う。さらに最近プレ値で買った人には同情したくなる。トレンドという魔法ででかっこよく見えたけれど、流行りが過ぎたらただのダサい靴だから。要するに、自分なりの考えがなく、トレンドに流されるのはかっこ悪いなと思った。これまでトレンドの移り変わりを論じていたのに、言うのもなんやけど。やっぱり、自分の着たい服を着るのが一番だな。

 

 

 

これからのバレンシアガが楽しみだ

僕自身は正統派モードが好きなので、クチュールを現代的に再構築した今回のバレンシアガのコレクションは気にいっている。財政的に、買えるかどうかは別だけど。このバレンシアガといい、バーバリーセリーヌといい、本格的なモードのリバイバルを感じた2019ssだった。これからのトレンドが楽しみだ。