日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

恋する男子はみんな阿呆 /『恋文の技術』 森見 登美彦

 拝啓 未だ見ぬあなたへ

恋文の技術 (ポプラ文庫)

恋文の技術 (ポプラ文庫)

 

 

四畳半に燻り、単位を湯水のように落とす腐れ大学生にとってバイブルとも言える森見登美彦の小説。そんな森見登美彦の小説の中でも爆笑必死なのが『恋文の技術』。タイトルからは想像できないが、本当に面白い。『恋文の技術』みたいに笑いすぎて腹が痛くなった小説はない。好きな人との外堀を埋めるだけのヘタレ大学生が主人公。色んな人に手紙を送るのだけど、好きな人への恋文はかけないでいる主人公。
 
森見さんらしい阿呆な大学院生が色々な人と文通を繰り広げる。森見登美彦独特の文体に、溢れんばかりのユーモアが相まって、腹が痛くなるほど笑ってしまう。
 
何と言っても失敗書簡集が面白い!恋をした男子がどんどん努力する方向を間違えるのが堪らない。恋をした男子はみんな阿呆ですよ。でも最後にはしんみりして、不覚にも少し感動してしまった。この恋文の技術のようにたわいもない文通こそ美しい。読み終わると誰かと文通がしたくなる。