日々の栞

本や映画について気ままに書く。理系の元書店員。村上春樹や純文学の考察や感想を書いていく

哲学的ゾンビ / 『ゾンビ』 村上春樹

 最近どこの本屋に行っても村上春樹の『騎士団長殺し』が平積みされている。本が売れないと言われる中、ここまで売れる村上春樹は本当にすごいなと思う。小説の発売に並ぶというのはほとんどない気がする。村上春樹以外だとハリー・ポッターぐらいかな。純文学ではなくて、大衆寄りだと言われたりして批判を受けることもあるけど、ここまで人を引き付ける作家ってほとんどいない気がする。

 

『騎士団長殺し』には、雨月物語が引用されてミイラの話が出てくるけど、今回は村上春樹のゾンビの話。タイトルはそのまま『ゾンビ』で『TVピープル』という短編集に収録されている。ショートストーリーとも言えるような短編小説となっている。あらすじは、あるカップルがいて、実は男の方がゾンビ...だという夢を見る話。しかし、現実も…

 

この話を読んでいると哲学的ゾンビという思考実験を思い出した。他人に心があるのかどうかは分からないということを示唆する思考実験である。確かに、他人に心があることの証拠なんてどこにあるんだろ?と色々関係ないことを考えながら読んでいた。