日々の栞

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現代人の繋がりの薄さ/「闖入者」 安部公房

 僕の1番好きな作家、安部公房の短編小説「闖入者」について書こうと思う。「闖入者」は『水中都市・デンドロカカリヤ』に収録されている短編だ。ちなみにこの「闖入者」が元になって安部公房の代表的な戯曲『友達』(谷崎潤一郎賞受賞作)が生まれている。

 

あらすじ

ある男の部屋に見知らぬ家族が押しかけてくる。そして民主主義の名の下に多数決で占拠していくのだが…

 

「闖入者」という名の通り、見知らぬ家族が自分の家に押し寄せてくるという話である。大家に訴えても、警察に訴えても、ちゃんととりあってもらえない。昔に比べると、都市部の一人暮らしなんて隣人との繋がりが殆どない。その繋がりの薄さから、隣人同士の助け合いは望めない。自分のテリトリーが見知らぬ他者に蝕まれていく様子が巧みな描写で描かれている。


この『闖入者』という作品は帝国主義時代の侵略のメタファーとして解釈することもできないであろうか。見知らぬ家族が数にものを言わせて民主主義を押し付けていく様子は、『近代化』を口実に侵略をする植民地主義の先進国を思わせる。帝国主義の先進国とは理不尽な要求を突きつける「闖入者」そのものではないだろうか。


常識的に考えて起こらないことが普段なんとも思わないような日常や常識が、いとも簡単に壊れてしまうというのは本当に怖い。日常を非日常に変えてしまう安部公房の小説はとてもスリルがある。安部公房の小説は、常識や日常がいかに脆弱であるかを教えてくれる。

 

 

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

 

 

友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)